152 助けを求める者
ガジが家に入るのを見届けたアルミは早速行動を開始する。
「ジェイナ!さっきの会話聞いてただろ?女衆からも6人伝令を出すよ!気がきくのを選んでさっきの指示を各場所に伝えておいてくれないか?それが終わったら。。。。ジェイナ、あんたが幼子達と一緒にいるんだ。」
「アルミ姐さん。。。貯蔵庫に行くタイミングを私に任せてくれるならいいよ。・・・後、、、それまで幼子たちを見てくれる子を選んでも良いかい?」
伏し目がちな顔で返事をしたジェイナを見つめたアルミは目を一瞬閉じると
「・・・幼子たちは20人近くいたね。・・・5、6人選んで子守をさせて良いよ。そのぐらいの空きは有ったはずだ。手配は任せるから直ぐに頼むよ。私は東の櫓から右回りに櫓を回ってくるから仕事が終わったら一回報告にきておくれよ」
「・・・ありがとう、、姐さん。直ぐにいってくるよ!」
駆け出したジェイナを少し見つめアルミは小さな溜息をつく。
「・・・帝都に報告が行ったにしても、、、軍の編成で10日、、いや2週間、、行軍で10日ちょっと、、、奇跡でもない限りは。。。間に合わない。でも、、、貯蔵庫の中だったら。。。」
小さくなっていくジェイナの後ろ姿を見つめながらアルミは東の櫓に向かって歩き始めたのだった。
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皇都ネクスにある皇居正門前に3人の若い男がいた。門を守る騎士たちは一見すると無表情で門の両脇に立っているだけだ。
「お願いします!お願いします!! メナー皇帝陛下にお目通りを! 村を!アガト村のみんなを助けてください!!」
かすれてほとんど聞こえないような叫びで門の向こうに届けとばかりに声を繰り返しかけ続ける。目は窪みそこそこの良品であったろう服は汚れ靴もくたびれている。
彼らは帝都と南州境にある防衛村から来たガジの息子とその仲間たちだ。休みもろくに取らずに二週間かかる道のりを12日で走破していたが気力も体力も限界に近かった。
皇都ネクスに辿りつきなんとか門前にあった騎士詰所にゴブリンの暴走を伝え騎士団と兵の派遣を要請、そのままの足で帝都冒険者組合にも依頼を出しにいった。が、
「・・・申し訳ございません。。。災害級の暴走ですと帝都冒険者組合では対応しかねるのです。。。ザイル学院の冒険者組合学院出張所に先ほど国から依頼が出たと報告を受けております。ザイル学院の出張所の方に確認をしていただけますか?」
と申し訳なさそうな受付の女性に断られザイル学院へ行くよりも皇帝陛下に直訴したほうが良いと皇居を目指したのだ。
直訴を続ける3人のうち1人がふらっと倒れかける。するとミスリル製の剣を1人だけ携えた騎士が倒れかけた若者をサッと支える。支えながら彼は仲間の騎士を見つめながら語りかける。
「我ら門番は如何なる理由があろうと許可がない者を通すわけにはいかん。それを許せば無法になるからだ。」
少し黙ったあと、
「先程詰所より火急の知らせが来たはずだがうっかり失念してしまった。もう一度報告をしてくれないか?」
そして支えている若者とボンヤリとしている2人の若者たちに目をやると
「彼らは善良な帝国民だ。気にせず報告を頼む。」
と門番に声をかける。
「ハッ! 詰所より帝都と南州境目にあるアガト村がゴブリンの暴走により援軍を求めるとの報せでありました!」
「そうであったな。誰か知らぬが危険を冒して詰所まで駆け続けてくれた者が居ったのであろう。。。」
返事をした騎士に相槌を打つと
「すまん。俺の権限ではここまでしかできん。・・・今は身体を休める事だ。。。」
と若者たちだけに聞こえる声で呟いたのだった。