151 防衛戦 4
物見櫓から見える光景は想像を絶していた。村の防衛柵の高さは2メートルあり物見櫓は5メートルの高さがある。綺麗な朝焼けが村を照らしているが同時に村の柵の外側を蠢く無数のゴブリン達をも映し出していた。
「・・・兵卒の女衆にも防衛を頼むとアルミに伝えてくれんか?後、声を聞かれても構わんから、・・・8歳以下の全ての子供は芋の貯蔵庫に移動させてくれ。。。。上から、、、外から開けられないようにな。。。そして、、、そうだな、、、、未婚の娘達には好きな男がいるならそばで防衛の許可をする。。。怪我が酷い者達は芋の貯蔵庫から離れた場所に移動させてくれないか?後、今夜からは篝火の使用を開始する」
村に6箇所ある物見櫓を見て回ったガジは彼の右腕たる兵卒の村人に伝令を頼む。防衛3日目までは後世の為に記録を取る余裕もあったがそれからはそんな余裕も無くなっていった。最後に記録をつけてから3日、、、本来なら息子達が帝都に辿り着き救援を頼んでいる事を喜んでいるはずだがそれどころではなかった。
(現場の指揮を取れる人間を動かすと一気に前線、、、いや、、、、最終ラインが崩れる。娘達に伝令を頼むか。。。好きな男がいる現場へなら喜んで行ってくれるだろう。最後ぐらいは。。。想い人の側で。。。いや、、、いかん!まだ諦めるわけにはいかん!!)
「ガジ。。。兵卒の女衆はあんたの指揮下にはいるよ。指揮系統が2つあると混乱するからね!」
ボーっとしつつ村を歩いていたガジにアルミが話しかけてくる。
「上位種が6体いる。。。まだ上位種は囮にした村の食い物を食ってるから問題ねぇが普通のゴブリンは空腹で限界だな。。。襲ってくるはずだ。さっき食い物の入った木箱と酒樽を柵の外に吊り下げたんだが上位種が持って行っちまう・・・・」
「面白い事してるじゃないの!箱に入れないで外にばらまきゃゴブリン同士で争うんじゃないかい?必要な食料だけ残してあとはばら撒いてみたら?」
「・・・そうだな。。。混乱してくれるだけでもありがたいな」
「じゃあ女衆から伝令を出すよ。ガジはちょっと寝てきた方がいい。判断力のない上司はお断りだよ!」
とアルミは笑いながらもガジに寝るように目で促す。
「私達が加わったらあんたが一眠りするぐらいの時間は稼げるさ?魔導戦乙女だった奴らが多いからね!」
「・・・悪いな。。少し休ませて貰う。上位種どもはのんびりしてるから上位種は刺激しないように頼む。芋の貯蔵庫に子供達を避難させた。1人付き添いを選んでくれないか?貯蔵庫には毒薬も用意してある。いざとなったら子供達と付き添いで使うように伝えてくれ。・・・未婚の娘達も。。。惚れた男がいるなら側で防衛でも支援でもさせるつもりだ。それも伝えてくれないか?」
「分かったよ。。。そういう状況なのね。。。私も後で全部の櫓をみてくる。だから家にかえりなよ」
とガジの背中をアルミは押し、少し窪んでしかしギラついた目のガジが家に入るまでみ続けたのであった。