134 エルフの決断
急に話に割って入った黒狐族の男を獅子族、熊族、虎族達など獣人族でも戦に秀でた者達が睨め付けるが男は飄々としている。そしてエルフの族長に
「あぁ。永遠の女王シルビア陛下は紅い髪と瞳を持つバンパイヤのお方だ。一回だけカイト様に誘われて女王陛下とお茶会をしたが気さくなお方で帰り際にコレをくれた」
と黒い犬歯がついたネックレスを取り出す。
「何か助けが必要な時はコレを持って城まで来ると良いと言われたんだ。鎮魂の森は俺の故郷だ。故郷を守りたい、守る手助けをして欲しいと頼むつもりだ」
と誇らしげにネックレスを掲げた黒狐族のアマルジートをエルフの族長は哀しそうな顔で見つめる。
「我等は、、、鎮魂の森の者達は既に一度シルビア殿、、‘ 漆黒の戦姫 ’ を裏切っておる。。。大層な怒りと共に我等の元を去ったと聞いておる。。。が試してみるのも良かろう。遠慮は要らぬ。何か要望はあるか?」
と聞いた族長にアマルジートは
「俺は斥候職だから1人でも城塞都市アームにいける。だが時間がかかる。。。魔法の支援が欲しい。フライや転移魔法が使える者が手伝ってくれるなら時間を大幅に短縮できる」
と答える。その時族長の横に控えていた1人の女エルフがいきなりアマルジートに斬りかかる。幸い彼女の持つ剣は鋼でミスリルの軽鎧にあっさりと弾かれる。みんなが息を呑み見つめた彼女の目は光っていた。族長が
「ルイアナ!!何をする?!」
と叫ぶが彼女は
「い、家の上の事だいたい分かった。お前は行かせない」
とアマルジートを光る眼で見ながら喋る。腰の短剣に手をかけながらも迷っているアマルジートを見た族長は
「リオン!この黒狐族の戦士を ‘ 漆黒の戦姫 ’ の元まで必ず送り届けるのだ。強化系、支援系何でも良い。最低5人のエルフを連れて彼の支援を行うのだ。いけ!!」
とアマルジートに斬りかかったルイアナと呼ばれた女エルフの光る目をを見つめて呆然としている男エルフに命ずる。男は動かなかったがもう一度族長から
「動かねばならぬ時がわからぬ程愚かではないだろう?我が里で一番エターナリア様の信を受けし者よ!」
と言われると我に戻った顔付きでアマルジートの腕を抱えて族長の家から一緒に飛び出していく。それを追おうとするルイアナの間に族長は立ち塞がると
「ルイアナよ。わしのひ孫であろうとあの者達を追う事は許さん!」
と胸を張り叫んだ時に村中から悲鳴や怒声が聞こえてくる。村に匿われていたもの達の半分。。。2000人以上の目が光っていたのである。
会議に参加していた獣人族達はあまりに急に起こった出来事についていけず族長とそのひ孫の睨み合いを眺めていた。そうしている間にも族長の元に次々とエルフの伝令や魔法による報告がはいる。
“ 村に滞在する者のおよそ半分が目が光った状態にある”
“ 虜にされたエルフも結界の影響を受けており殺す覚悟が無ければ恐らく止められない”
“ おかしな事に目が光った者は魔法や加護を使用してこない”
ひ孫の足止めをしながらそれらの報告を聞いた族長は他種族の代表に話しかける。
「おそらく安全と言われた北や北東も同じ状態だろうの。。。我等エルフは西に向かう。結界内に我等が留まり目が光るとちと厄介な状況になるのでな。我等は結界の外にでる。あと少しでもあの黒狐族の手助けもしてやりたいし恐らくそっちが一番手薄と思うのだ。して、、お主らはどうする?」
と伝令に全てのエルフに結界の外に出るまで西に移動しながら戦うように伝えた族長は覚悟を決めた顔をしていた。