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133 鎮魂の森 (3)

奴隷紋の戦いを生き延びたエルフの人数は僅かであったが森の噂を聞いて移住してきたエルフ達も居たり結界の効果もありエルフの人口は400人ちょっとの規模に今はなっていた。そして今鎮魂の森、転生樹海の結界内にあるエルフの村は森の外周部から救助されたり逃げてきた者達で溢れかえっていた。その人数は5000を超える。森が豊かな為に食べ物はまだどうにかなっているが破綻するのは僅か目の前である。


エルフの寿命は3000年程で流石に奴隷紋の戦いに参加した者は生きては居ないがが彼らの孫やひ孫の世代はまだ健在で奴隷紋の危険性を伝えていた。森の南側外周部にあった集落は壊滅状態であり王国や城塞都市アームの方角にある西側も夜間は亜種のゴブリンが闊歩し、未だ抵抗を続けている村々内からも目が光り穴を掘り出す同胞が出始めていた。


目が光り始めた者に接触した者が次の犠牲者になりやすいという事は既に周知の事実であった。当初は目が光っていても普通に会話が出来たりしていたのだが夜間になると寝ずに穴を掘り始める行動を取る為に次第に警戒の対象になっていった。目が光っているものはおかしいという認識が出始めると急に昼夜を問わず穴を掘る作業を始めたのであった。


「して。。。どうする?神々から授けられた加護(スキル)も効かぬ。魔法でもない、邪な物が取り付いているわけでも無い。我等の口伝にもこの様な事態は伝えられておらぬ」


各種族の代表や実力者を交えた会議にてエルフの族長が皆に話しかける。この会議に森の外周部、北から北東にかけて存在する村や集落の者は参加していない。事の重大さに気付いておらずエルフ達の警告も聞き流されている。誰も返事を返さない静まり返ったなかエルフの族長は続ける。


「ハイ・エルフ様の転生樹海の結界内でも我等エルフの者が何人かおかしくなっておる。。。結界は、、、結界もこの異変には効果がないという事だ」


と再び皆の顔を見回すが誰も押し黙ったままである。と、獅子族の者がポツリと


「エルフも大した事ないな。結界のお陰で今までデカい面してた割には森から出てこねぇで何も知らんぷりしてたのによぉ!こうやって事が起こっても ’ 口伝にねぇ ‘ とか ’ して、どうする? ‘ だと? おかしくなったのは変なゴブリン供が現れてからだ。ゴブリン供をブッ殺せば良いだけだろう!」


エルフの何人かが獅子族の者を睨むが族長に手で制される。族長は視線を獅子族の者に向けながら


「言って理解してもらえるか分からぬが我等が結界内に閉じ籠ったのは要らぬ争いを大きくせぬ為である。今は各種族の村々や集落に分かれておるが我等は元々同じ目的の為に集まった者達の末裔であるのだ。この転生樹海で力を増しておる我等はいかなる部族にも肩入れする訳にはいかぬ。種族は違えど我等は同胞であるのだ。我等が肩入れした部族は優位になるであろう。そしてそれはいつしか我等を巡る同胞同士の争いになる。それだけは先の大きな戦いで同胞達を守る為に立ち上がった女性の為にもする訳にはいかんのだ。だがこうして同胞の危機には我等も一緒に立ち上がる覚悟は常に持っておった」


と話し諭すが獅子族の者は鼻を鳴らし


「そんな本当か嘘か分からない昔の話はどうでもいいんだよ。俺たちからすれば豊かにくらしていけるか!子らを安全に育てられるか!それだけの話だ!!」


とまくし立てる。周りにいる他種族の者達も黙ってうなづいている。エルフの族長は目を閉じながら


(我等は方法を誤ったかもしれぬ。。。どうせ忘れ去られると彼らに伝えていく努力をせんかった。。時間はないがリコールメモリーを見せて伝える事から始めるしかないの。。。)


と目を開けた時に黒狐族の男が口を開いたのだった。


「城塞都市アームを治める永遠の女王シルビア陛下は普人族だとか獣人族とかを気にしないでくれる。鎮魂の森以外から来たエルフも女王陛下が治める街で見た事がある。かの女王陛下の王配になられたのはハイ・エルフのカイト様という。実は昔にカイト様を案内した事があってその縁で何回か一緒に食事をした事があるんだ。ここハイ・エルフ様の結界に異常があると伝えれば助けてくれるかもしれねぇ。確証はねぇけどな」


「その永遠の女王陛下というのはバンパイヤの方かの?」


そう尋ねたエルフの族長は子供の頃祖母から見せられたリコールメモリーに映し出された紅い髪の女性を思い浮かべていた。







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