132 鎮魂の森 (2)
「お願い。。。もう一回だけエターナリア様の加護を使って欲しいの。。。後生だから。。。」
と木で作られた檻の中にいる色々な種族を、特にそばで他の檻に入っている者達と同じように一生懸命に穴を掘ろうとしている1人のエルフを見ながら彼女は同胞に懇願する。
「・・・あぁ。。。折角だから怪我人の入れ替えもしよう!」
と彼の周りにいた包帯を巻いたもの達が何事もなかったかの様に彼にお礼を言いながら離れていく。離れていくもの達は様々な種族の者たちだ。少しすると脚を少し引きずったり具合の悪そうな者達がやってくる。エルフの男の周りが怪我人で埋まると男は徐に
「天を支え命を育む世界の光たる世界樹エターナリア様。邪を払い命育む貴女の力の一端をお借り致します。‘ エーテルウェーブ ’ 」
と唱えると彼を中心に緑色の波動が半径15メートル程広がり消えていく。効果は一目瞭然で彼の周りにいた者たちのアザや脚を引きずっていた者も普通に歩ける様になっている。が、檻の中にいる者たちは相変わらず穴を掘ろうとしている。
女エルフが檻の中のエルフに
「ねぇエクス。。。もう穴は掘らなくても良いでしょう?」
と話しかけると彼はユックリと視線を合わせるが
「・・・ルイアナ。。。穴を掘ろう。家まで続く穴を。。。」
と意味の分からないことをつぶやく。一見会話が成り立っている様に聞こえるが彼の目は怪しく光り、視線は女エルフ、ルイアナを見ているが見ていない。。。
檻に近づき男エルフに触れる様な仕草をルイアナは見せるが唇を噛み締めて堪える。そして彼女は振り向くと加護を使った男エルフに
「リオン。。。ありがとう。今夜は私が貴方のフォローをするわ。もうすぐ日も沈む。。。あのゴブリン達がやって来る前に救助した者を連れて基地に戻りましょう」
と話しかける。そして魔法の檻にいるエクスと呼んだ男エルフに
「必ず助けるわ。だから穴でも掘ってればいいのよ!!」
と呟くと後ろを振り返る。そして後ろにいる他種族の者達に声をかける。
「四重結界内に戻るわ。あそこならゴブリン供が来ても確実に勝てるから!あぁなった者達は連れてはいけないわ。。。置いていきます」
身内や知り合いが居るのだろう皆の中からどよめきが起きるが皆、彼女も身内を置いていくのを知っているのだ。どよめきは続きながらも彼女達エルフについて多種族の者達も移動を始めたのであった。
その中に黒い狐耳を持った壮年の男がいた。彼は鎮魂の森ではほぼ見ないミスリルの軽鎧を見に纒いミスリルの短剣を腰に携えている。腰帯にささった何本かのナイフもミスリル製のようだ。彼は檻の中にいる何人かの黒い狐耳を持つ者達を少し見つめると
「あぁ。。。やっと村で威張れると思ったんだがな。。。やっと成功して帰ってきたのにな。。。」
と背中に抱える魔法袋を抱えなおすとエルフが先導をする集団の殿をしたのであった。