13 原石の価値
アリアのアドバイスに従って正装から皮鎧に着替え 、首から借りたネックレスをぶら下げる。武装はナイフだけしておこう。いざとなれば魔法袋から直ぐに取り出せばいいのだ。認識障害のマントはカイト次第と言われた。少し悩んだが着けないで行く事にする。街に入る時にエルフを1人見かけたのも後押しした。
この城塞都市アームは城を中心に円形をしており内壁などはない。門は全部で4箇所ありカイトが利用したものは南の位置にあった。それぞれの門から一直線に城までの大通りが走っており四つに区切られた場所により特色があるとの事であった。
カイトの居場所に近い南東の区画は住居や商店が多く、南西にはダンジョンや城塞都市近辺で日々の糧を得ている冒険者達の為の宿屋、武器屋が多いとの事であった。
北西に鍛冶屋や皮を舐めしたり加工する店等が多く、北東に闘技場などもあるが都市を治める公共の建物が多いとの話であった。
城の地下はダンジョンになっており最初の7層は農地、牧場地、採石場や鉱山等と言った特殊なフロアになっておりアームを支えているとの事であった。なんと海の層もあるそうだ。機会が有れば海を見てみたい。最下層は100階を超えており冒険者たちは8階層より下に潜って魔物を倒したり一攫千金の財宝を目指しているのだ。
建物を出て換金所に向かいながらつらつらとアリアとの会話を思い出す。
「ここかな? 換金したら城まで歩いてみるか。」
と計りの絵のついた看板を見つける。
中に入るとカウンターがあり妙齢の猫獣人の女性がいる。
「換金所はここでしょうか?」
と近寄りながら微笑む。
「えぇ! こちらにお掛けくださいにゃ。換金は王国貨幣か帝国貨幣ですかにゃ?悪いんだけど聖国の貨幣は換金対象では無いにゃ。」
とアタフタしながら猫獣人のお姉さんがカウンター前にある椅子を指し示す。
「いえ、こちらをお願いしたいのですが。」
と袋から一つ宝石を取り出す。
「少々お待ちくださいにゃ。ねぇ、ガージル!鑑定お願いにゃー!」
と裏にお姉さんが声をかける。
少し経ってずんぐりとしたドワーフがやってくる。
チラリとカイトの顔を見て、フンっと顔を顰めるが首筋にかかったネックレスを見ると、
「にゃーにゃーうるさいのぅ、ほれ、見せてみぃ」
とカイトの前にどっかりと座る。お姉さんは爪を弄っている。
渡された石を少し機嫌の良さそうな顔で弄りながら、
「これなら白金貨25枚に大金貨50枚出していいじゃろう。手数料は引いてあるぞぃ」
とカイトを見上げならドワーフがいう。
「凄いにゃ。この換金所一番の値段にゃ!」
とお姉さんが喜んでいる。
「白金貨なんぞ街で使えんから一枚バラしておいてやるぞぃ。どうせ入れ物も持っておらんじゃろう?サービスしといてやるぞぃ。魔法袋に入れておけばかさばらんじゃろう。まぁ大銀貨50枚も有れば大抵のことはできるぞぃ」
と白金貨24枚 大金貨100枚 金貨400枚 大銀貨1000枚がカウンターの上に並べられる。硬貨には狼と城の絵柄がどの種類にも表裏入っている。上質な皮袋にそれぞれ分けて入れてくれ、大銀貨50枚を別に入れてくれた。
ズッシリと重い袋を魔法袋に入れるとやっと身軽に感じる。50枚を入れた小さな皮袋は腰に結わえる。換金所を出る時にドワーフからは
「また良い石があったらここに来るんじゃぞぃ」
「換金するならここでお願いするにゃ!ありがとうにゃ!」
と猫のお姉さんからも声をかけられた。
会釈をしながらカイトは城に向かって歩き出した。