125 聖国討伐の段取りの段取り
やっと痺れが取れた脚をさすりながら起き上がる。タニヤもティファニーも水平線に沈んでいく太陽を見ていた。沈む時はあっという間だよな!と思いながらみんなにスペシャル魔法をかける。自分にもかけておいた。潮風で身体が少しベタついていたのだ。脚と手は砂まみれになってたし。。。
「お姉ちゃんたち、朝はゴメンね。自分って何か血とか見ても美味しそうとか不味そうとかしか思わなくなっちゃって確認したかったんだ。それで1人で行ったんだけどやっぱりそうしか感じないんだ。。。バンパイヤの習性なのかも。。。」
と言うと
「シルビア姉様から聞いているの。若いバンパイヤは自分をコントロールするのが難しいからディーが暴走しそうなら止めてって言われてるの!」
とティファニーから返事が来る。頭を二人から撫でられる。成る程!母上はちゃんと知ってたのか。と思いつつ自分の場合は少しケースが違うようにも思う。二人に
「そろそろ皇帝陛下の所に行こうか。お腹も空いてきたしトイレにも行きたい!!」
と3人で皇帝陛下と皇母の気配がする屋敷の部屋に影移動したのだった。部屋には二人とメイドが5人控えていた。テーブルの上には蝋燭が灯っており壁には魔石を利用した光源が付いていて明るい。メナー皇帝に促されて椅子に座る。タニヤとティファニーは自分の後ろに控えようとする。と、皇帝が
「確かタニヤ殿とティファニー殿でしたな?お二人とも座ってくだされ。ここは公式な場では無いゆえな。わしら皇族はエルフにつらなる血筋でもある。是非一緒に夕餉を楽しみたいのだ」
と二人を見ながら話しかけてくる。二人はどうしていいか分からず自分の顔をを見ているので
「皇帝陛下が良いって言われてるから一緒にたべようよ」
と返事をすると二人とも自分を挟むように座る。ふとアリア達は?と思い機動要塞改にアクセスすると陽が沈みはじめた王国でまだ楽しそうにお茶会をしていた。。。母上もそうだがお茶会の何が楽しいのかサッパリ分からない。。。アリア達はまだほって置いてもいいな!!それから皇帝陛下にトイレに行きたいと伝えて一旦席を離れて用を済ませたのだった。
席に戻るとコース料理ではなく大皿から取り分けて食べるスタイルのようだ。大皿の全部の箇所から少しずつ取られた料理が皇帝の前に置かれる。そして取り分けたメイドが毒味をする。次に別なメイドが同じように皇母の分を取り分けて毒味をした。
機動要塞改の探査で毒が無いのは分かっているが自分達の料理を取り分けてくれる残り3人のメイドさんにも毒味をしてもらう。確か毒味も給仕をする者達の楽しみの1つだったという記録だかなんだかを見た記憶があるのだ。皇族が食べるような料理なんて普段はたべれないだろうし!
料理は海鮮物が多く味付けも少しだけ濃い。きっと塩分補充が大事な地域なんだろうなとか思いながら食べていく。タニヤとティファニーも楽しそうに食べている。海外旅行で現地の食べ物をたのしんでいる感じなのだろう。微笑ましい。食べ終わるまではみんなでたわいも無いお喋りをしていたが食後のお茶を飲む時に皇帝が
「ディエゴ殿。奴隷首輪の話なのだがこれでもう我等、帝国、王国、アームには首輪に囚われた者達は居らぬのだろう?ならば昼の話の通り聖国内の奴隷達や事が成った後の聖国についての会議は明後日よりせぬか?イルアラエ姫にも伝えねばならんので明日ではなく明後日としたいのだ。ディエゴ殿はそれで良いかな?」
と聞いてくる。学院も行きたいし会議は夜がいいな!!
「えぇメナー皇帝それで大丈夫ですが会議は夜でも大丈夫でしょうか?昼は学院に行きたいのです」
と返事をすると
「あぁ無論だとも! 是非学院生活を楽しんでほしい。それとディエゴ殿の護衛方ともこれよりは縁を深めていきたいので聖国についての会議は護衛全員を連れて来てもらいたい。会議では彼女達は護衛としてではなく客人や立会人としてもてなすので堅苦しい事はいらんぞ」
と最後に変なリクエストが来る。アリア達に手を出したいとかそう言う下心は感じないがなにか思惑があるのは感じる。まぁみんな一緒の方が後で食事を合わせたりするのが楽だからいいかな?お茶を楽しみメイド達がテーブルの上を片付け始めたのを見計らい
「では皇都に戻りましょうか?宜しければメルクリル様もご一緒にお送りしますが?」
と伝える。あ!その前に
「メナー皇帝!皇都に捕らえられていた奴隷なのですが一人は白城ムーアに仕えるメイドの身内のようです。あともう一人、帝国冒険者組合本部副ギルド長ナディアさんと身内の可能性があります。我が方のメイドの身内の者はアームで身請けしたいのですが?」
といった自分を見た皇帝の顔が青ざめる。皇母の顔もだ。‘ ??? ‘と思っていると皇帝が
「シルビア陛下に仕える者の身内を奴隷にしようなどとは絶対に我が国の意思では無いとお伝えしたい。護衛の方々も理解して頂けると有難い。。。勿論その者の身柄は直ぐにお渡しすると約束しよう」
と自分の顔を見て言った後にタニヤとティファニーの顔を縋るようにみている。
・・・・・?? あぁ成る程!こちらの世界では十分にムーアが帝国に喧嘩を売る理由になるのか!!自分からすれば副宰相とやらが勝手にした事だがそれは地球の価値観を持つ自分だからそう思うだけであって自分達の身内を奴隷にしやがって!!と突っ込まれたら帝国としては国が国に喧嘩を売ったと言われても言い返せないのか。
アリア達、護衛を会議に立ち会わせようとした理由も分かった!!自分を引っ叩いたタニヤとティファニーをみてこの訳の分からん上に格上の身内でとんでもない魔法を使う子供の抑止力として自分の護衛達、アリア達が有用と思ったわけか!!
まだ子供でよく分からない自分相手に人柄を見るより、というか保険でアリア達とも仲良くなって置けば自分を引っ叩けるぐらいの関係だから自分が暴走しそうになったら間に入ってくれるかも!とか考えたに違いない。ちょっとムッとするが確かにいきなり街前で津波とか起こした子供が俺だ。。。言い訳はするまい。。。ちょっと間が空いたが
「メナー皇帝陛下。私も奴隷解放の折は一緒にいました。帝国の意思で我がムーアの身内にそのような事をした訳でないと私からも母上にはお伝えしておきます」
そう答えた自分を額に少し汗をかいた皇帝はホッとした感じで見返してきたのだった。