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122 皇帝と皇母

帝国の統治は勿論皇帝が摂るがそれぞれ帝都を囲む四つの区域、州の統治者として聖国と接する東州には皇太子が、東州を援護する北州と南洲には時代にもよるが皇母や皇父、功が有り皇家より信のある者が統治する習わしだそうだ。一番安全な西州は最後の砦として先帝などが治めるらしい。


皇帝の母であるという女性がこの西州にいる事自体はおかしくは無いが街の拡張や彼女が居るはずの南州から西州に移動した事を皇帝に知らせていない事も問題なのだろう。西に傾き始めた陽と潮風で少し暑い。


椅子とテーブルを出して皇帝に勧める。皇帝の顔色が少し優れないな。皇母と皇帝が呼ぶ女性にも座るように声をかける。


「初めまして。私は城塞都市アームを治めるシルビア女王陛下と世界樹の護り手 ハイ・エルフのカイトの間に生まれたディエゴと申します」


と挨拶をすると女性は返礼をしてくる。


「初めまして。私はメルクリルと申しますわ。ディエゴ殿下」


「ここは海も眺めれて潮風も気持ちいいです。しかし陽射しが少し強いようにも感じます。座ってお話をしましょう。ちょうど海を観ながらお茶も楽しみたい気分ですし」


と続ける。皇帝の顔色は未だに悪い。まぁだいたい想像はつくが話をしないと始まらないのだ。ちゃっちゃとお菓子やお茶を収納から出していく。そして


「タニヤとティファニーも一緒に座ろう。僕には毒が効かないからね。悪いけど2人が先に食べたり飲んだりしてくれる?」


とタニヤとティファニーと一緒に座ると皇帝もやっと座った。メルクリル皇母も座ってくれた。皇母の後ろには元奴隷達が所在なさげに立っている。彼らにだすぐらいのお茶や甘味もまだまだあるが恐らく彼らが必要になる。なので彼らはそのままほっておく。皇帝はお茶に砂糖をかなり入れると少し口に含みそれから一気飲みした。皇母も喉が乾いていたのだろう半分ほどお茶を飲むと口直し様の水も飲んでいた。皇帝は飲み干した茶器の底を眺めながら


「母、、、いやメルクリル殿。。。久しぶりだな。ここに居るディエゴ殿がシルビア陛下より勅命を受けて奴隷首輪(イビル・チョーカー)の破壊を帝国や王国でもしてくれておるのだ。そなたも見たように奴隷首輪(イビル・チョーカー)はディエゴ殿の手にかかれば破壊可能なのだ。実に喜ばしい事である」


と喋り器をテーブルに置く。すかさずティファニーがお代わりを入れるが飲まないようだ。


「メルクリル殿にいくつか確認せねばならん事がある。。。先ずカルメの街が拡張されておるようだが我に拡張の報告は来ておらんのだ。・・・あとそこに居る奴隷たち、、、いや元奴隷達は何故そなたと共に居るのだ?」


喋り終わった皇帝は未だにお代わりが注がれたカップを見つめている。メルクリル皇母は俯いているように見える皇帝を見ながらハッキリと


「ここ西州の城塞港街カルメと南州の城塞港街ライオンは私の命で拡張しました。理由は奴隷首輪(イビル・チョーカー)をつけられた者達を衆目の目から遠ざける為です。奴隷たちは私の一存で買い取りました。ここに居る者たち以外に南州の城塞港街ライオンに24名います」


「そうか。。。皇国法をメルクリル殿は知っておろう?奴隷首輪(イビル・チョーカー)の使用や装着された者の所持者は死罪と。。。」


そう言った皇帝の言葉は小さく潮風に流されてしまいそうなほどだ。それを聞いたメルクリル皇母は平然としながら


「えぇ存じています。これらは全て私一人で犯した事。先帝や他の者達は一切関わっていません」


と簡潔に返事をする。うーん。予想通りなんだけど奴隷達の反応がない。死罪云々言った皇帝の声が小さくて奴隷たちに聞こえていないのだ。しくじったなー機動要塞改(サードアイ)で先程の自分達の声が奴隷や倒れて居る者達にもにも聞こえるようにする。麻痺や麻酔も解除する。


慌てて駆け寄ってくる者達は奴隷達の側に来ると膝をつきメナー皇帝に恭順の意を示すが許可されぬと発言が出来ないのであろう。悶々としている。奴隷達は静かだがお互いを軽く見回したりしている。今までの奴隷達より行動的だが率先して動くほどではない。やはりそれ程精神的に縛り付けるものなのだろう。


仕方がない。まぁここは力技の見せ所だな!と南州の奴隷達の首輪を破壊して回収する。後は新しく作った城壁か!石の表面で新しい城壁は分かる!両方の街に新しく作られたそれも魔法で砂に変える。


「メナー皇帝陛下!皇国の罰ってどんなのがあるんですか??城塞都市アームですと一番重い罪が眷属化で闘技場で魔物とかと闘ったりとかあるんですよ!ちょっと興味があります!」


と言った自分を苦々しい顔で皇帝は見つめてくる。メルクリル皇母も呆気に取られた顔をしていたが懐を弄りながら穏やかに


「皇族、王族や高位貴族は服毒が多いわ。罪が酷ければ斬首とかもありえるでしょうが」


と返事をしてくる。


「へぇ!自分には効かないから毒って調味料みたいな感じなんです!ところで先程メナー皇帝陛下が言っていた新しい城壁って何処に有るんです?自分には見えないですが。。。あと奴隷首輪(イビル・チョーカー)をつけられた人も皇国には一人も居ないですよ。今確認しましたがゼロです」


と皇母がさりげなく懐から取り出した小瓶をアポーツで取り上げる。おぉーこいつはマンドラゴラとワイバーンの尻尾の毒が混じったやつか。。。と機動要塞改(サードアイ)からの分析結果をみる。小瓶の蓋を二人の前で開けると自分のお茶にドロっと入れていく。スプーンでかき混ぜて一気飲みをする。あ!きた!この少し舌と胃の辺りがピリピリッとする感覚が好きなのだ。タニヤが


「あ!!ティファニー姉様!またディーが毒をお茶の香辛料代わりにしてるわ!!!もう何度言っても聞かないんだから」


といい皇帝が


「な?城壁が無くなっておる。。。いつの間に。。。」


呻いていたのだった。






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