110 会議 (2)
これまた10分程歩いて着いた場所は狭くも無いが広くも無い部屋だった。全て石造りの部屋で窓がいっこもない扉もなんと三重で二つは引き戸になっており一番外側の扉が開閉式にになっているようだ。ザ!密室である。室内には一本の木から削り出した大きなテーブルがあり周りには10脚椅子があり既に皇帝陛下は入り口を見るように座っていた。背後には1人の男が立っている。
入って右手側に王国の大使とその護衛であろうか。女性が1人と女性騎士が立ったままでいる。女性は二十代半ばで現れた自分を見て一瞬であるが凄く悲しそうな、怒っているような、落胆したような顔をした。その表情は直ぐに隠されて微笑みを浮かべた表情で自分を見ている。自分を待っていたのかな?と思いつつも執事に先導されて左側の椅子に近寄る。自分が椅子の側に来ると皇帝が
「ディエゴ殿お久しぶりですな。あそこにおられるのは王国の大使かつ王国の王妹でもあるイルアラエ姫ですな。シルビア陛下より此度の問題はディエゴ殿に全て任せると先程言われましてな。。。私共としても急な話でちょっとびっくりしておったのだ」
と女性を紹介しつつそんな事をいってくる。成る程。王国側からすれば母上から重要な話では無いと言われたと感じたのかも知れないな。。。だってまだ俺って10歳だし。。。少し先程の女性の表情の意味がわかった気がして納得する。同時にこの会議でイルアラエ姫や皇帝陛下の自分への評価をかえてやるぜ!!と妙な競争心が湧き出てきた。先ずは皇帝陛下の方を向き
「メナー皇帝陛下。先日のご挨拶からさほど日はたっておりませんがまたお会いできて嬉しいです。シルビア陛下に今回の問題は私が関わりたいとお願いをしたのです。」
と伝え少し待つが皇帝陛下はあごひげをサワサワしており何と返事をするか迷っている。それは迷うだろう。格上の子供の我儘で折角の会議の意味が無くなったという訳にもいくまい。さっとイルアラエ姫の方を向き
「初めまして、イルアラエ姫。私は城塞都市アームを治めるシルビア陛下と世界樹の護り手 ハイ・エルフ族のカイトの間に生まれたアームの太子ディエゴと言います。此度の会議は奴隷首輪を着けられた者達が発端で開かれると聞いております。会議の要望はどの国から出されたのでしょう?」
と先ずは軽くジャブをぶち込む。するとメナー皇帝が初めて見せる面白いものを見るような顔で直ぐに割って入ってくる。
「ははは!ディエゴ殿。お若いな。先ずはお二人とも座られると良い。食事をしながら話をしようではないか」
と返してくる。くぅー。。。俺のジャブが、、、イルアラエ姫に向けたセリフに見せかけて場所を提供している皇帝陛下をクラクラさせるジャブがアッサリとかわされた。。。この場で一番厄介なのは皇帝であり、おそらく最終決定権を持たぬ大使では無い。メナー皇帝に最初の内にキツめのジャブをぶち当てておきたかったのに。。仕方がない。アリアがスッと引いてくれた椅子にピョンっと飛び乗りテーブルの高さを確認する。少し高いが飲食に困るほどではない。と、メナー皇帝がドアのところに立っていた執事に
「食事を持ってきてくれ。イルアラエ姫には何時もの奴でーーー」
と言いつつイルアラエ姫を見ると彼女は静かに首是する。
「ディエゴ殿は成長期だ。量も踏まえて用意してくれ。最後には最高のおもてなしを頼むぞ」
と伝える。うん?今アリアの雰囲気が少し変わったぞ? ‘最後には最高のおもてなしを頼むぞ ‘ と言った言葉に反応したようだが。。。座り直す振りをしながら後ろに控えるアリアを見る。チラッと見ると少しだが目線を逸らした。ほぅ。。。恐らくだがアリアは皇帝が執事に伝えた言葉の中に含まれる隠語を知っているもしくは把握したが今は何もしないという事だろう。イルアラエ姫、彼女の護衛は何の反応も見せなかった。だがアリア、皇帝の護衛と執事は少し反応があったのだ。毒とか盛ってきたらさっきの獅子族のお姉ちゃんを対価に貰おうと誓う。
そして会議の議題や内容には一切触れる事なく昼食が始まったのである。