11 会話を楽しむ事にした。
コンコン コンコンと優しいノックの音が聞こえる。
「はい」
と返事をしながらカイトはソファーから立ち上がり、アリアの入室を待つ。
「カイト様、座っていて頂けますと私もメイド冥利に尽きますわ。」
とイタズラっぽい笑顔を見せながらアリアが台車を押しながら入ってくる。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます。」
カイトは返事をしながらソファーに座りなおす。マントは壁際にマント掛けがあったのですでに掛けてある。
アリアを観察していると流れるような動作でカイトの前にカップ受け、ティーカップを並べ少し奥に薄くスライスされたパンに色々な具材が挟まった物が並べられた器も置いていく。淹れられたお茶は初見の物だが甘く、重厚な香りが同時にする。チラリと壁に掛けられたマントを見ながらアリアが、
「カイト様、長旅でしたでしょう。城からの返事も来ましたのでお茶を楽しまれながらお聞きください。」
カイトは伏し目でお茶を眺めながら、少し悩んだが素直に行こうと決めたばかりだと口を開く。
「アリアさん、もし宜しければアリアさんもご一緒にお茶を楽しみながらお聞かせ願えますか?どうも傅かれながら話を聞くという事に慣れていないものですから。あとアリア様とお呼びすべきでしょうか?」
とアリアの瞳を微笑みながら真っ直ぐと見つめる。
「あら。。。」
とアリアの眼が一瞬真ん丸く見開き、それでも優雅な動きのままもう一つお茶をカイトの向かいに用意し始める。
フワリとソファーに座ったアリアは砂糖を三杯、スプーンで自分の器に入れると、
「おさきに城からの返事をお伝え致しますわね。女王陛下、シルビア姉様はカイト様に明日の午後一番の謁見に会われるそうですわ。夜には歓迎の宴も用意するので是非参加してほしいとの事ですわ。」
言い終わるとお茶を一口含み、やはり砂糖は三杯が一番ね!と独りごちている。
カイトもアリアに習い砂糖を三杯入れ、
「承知致しました。急な願いにかくも早急なご対応ありがとうございます。感謝の言葉も見つかりません。」
と頭を下げる。
「「ところでなんで。。。」」
と2人の声が重なる。
フフッと笑いながらアリアが
「趣味と実益ですわ。姉様にお仕えする為、そして永く永い時間に意味、意義のある時間を。簡単に言えばそういう事ですわ。ところでなんで私がただのメイドでは無いと気づかれたのですか?」
「この建物に入られた時、明らかに歩調が滑らかになりましたし、入管管理用の建物を自在に使える側仕えの方が普通とはとても思えなくて。不躾な質問ですが、バンパイア種は太陽の光が苦手と聞いていたのですが。。」
お茶を口に含み、意外と甘味が強いのも美味しい物だと楽しむ。
「旅の間、お食事も大変でしたでしょう?こちらもどうぞ、私のおすすめですわ!」
とアリアはサンドイッチを何個か取り分けてカイトに渡すと
「私とシルビア姉様は太陽の光は大丈夫ですわ、好きとは言えませんし夜の方が居心地が良いのは確かですけれど。」
遠慮なくアリアの取り分けてくれたサンドを食べながら、憧れのバンパイアとの会話をカイトは楽しむ事にした。