1 神様で遊んじゃダメだった。
その日俺は浮かれに浮かれていた。
「ふぅ。これでまた海外に行けそうだな。場所はモルディブかインドか。。。面接してトライアル、VISA申請も考えると2、3ヶ月ってところか。」
エージェントからのメールを再確認すると、2年前に帰国した時より月の給与も1000ドル以上あがっている。相当数の日本人が撤退したのだろう。笑いが止まらない。
海外ホテルの和食料理長として仕事をしていたが、イスラム国の攻撃対象に日本人も含まれた為、急遽帰国。
帰国後に痛感したのは国内での職歴が無い為、40歳の中年には碌な仕事はなかった。
飲食系もホテルも既に何年も一緒に働いている人が優遇され(まぁ当たり前だな)、仕事は一通りできる為、冷遇はされないが外様扱い。結局はコンビニの夜勤でこの時までを過ごしていたのだ。
ふと再生しっぱなしにしていた動画を見ると、人気異世界アニメのハイライトの動画が流れていた。英語の字幕付きだ。ちなみに海外で働いている日本人の殆どはネット中毒といっていい。僻地や発展途上国で安全に遊べて、お金もかからないからだ。某巨大掲示板や、動画サイトは単独で世界中にいく個人契約の自分にはもってこいの娯楽であった。
「これだけ世界中に認知されてたら異世界担当の神様とか生まれてるんじゃないだろうか??」
ふと思ってしまったのだ。夜勤中、酔っ払い相手には二フラム、仕事帰りのキャバ嬢相手には鑑定たまに魅了を脳内でかけ続けて遊んでいた俺は立派なオタクであった。酔っていたとはいえ、ナチュラルにそういった思考になった自分を殴ってやりたい。
「取りあえず設定つくるか!お供え物は俺が作ればいいしな!!」
幸せおすそ分け的な思考で俺は行動を開始した。
「異世界関係の全て担当。勿論神隠しも異世界関係で、それらを起こす神々の上位存在、ぶっちゃけ世界中に異世界物のファンいっぱいいるだろうし天御中主神・高御産巣日神・神皇産霊神クラスの力を持ってる設定でいいか!他の世界にちょっかい出せるんだから当たり前だよな! 後は何処に祭られてる設定にするか、、、地元でいいか!桜島を中心にしたカルデラが日本における聖域っと。おっと御尊名も考えないとな、、、、桜島にちなんで天野桜姫でいいか!」即断即決は美しい。
この日の俺は飲みすぎず、だが海外への再出発の高揚もあり無駄に行動力があった。
「よし!神棚完成!お神酒とお米おっけ!!おっと、そういえば神様って祟り神とかいたな。。設定に追加だ。天野桜姫に荒んだり祟ったりする面はなし!っと。そういえば容姿も設定しておくか!見た目15,6歳で黒髪、勿論すっごいかわいい、綺麗と色気が混ざった感じ。俺って有能!!後は2,3品作ってお供えするか。」
上機嫌で料理を終わらせ神棚に奉納したのが俺の最後の記憶だ。