表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛鳥の守護神   作者: 葉月みこと
第二章
7/41

高松塚古墳

「このバス。普通なんですね」

サトルはかめバスに乗り込み、座席に座るなり言った。

「普通って?」

「かめバスっていうから、亀のフォルムでもしているのかと思っていたんです」

キミはクスクスと笑った。


 サトルとキミは高松塚のバス停に降り立った。

「結構な坂だったわよね。バスに乗っていたから、あっという間だったけど、歩いていたら、やっぱり大変だったかもね」

サトルは苦笑いをしながら、うなずいた。


 高松塚古墳は“飛鳥歴史公園”内にある。

 公園は広大で見晴らしが良かった。芝生が一面に生い茂っているが、冬の寒さでくすんだような黄緑色をしていた。


 2人はしばらく歩道を歩いたが、古墳らしきものは、なかなか見えてこなかった。

「あの坂を登ったところかな。結構広いし、迷っちゃうわね」

キミはマップと景色を見合わせた。

 公園内も坂が続いている。さっきまで歩いていた歩道が眼下に見下ろせるようになった。

 サトルは立ち止まり、ふーっと大きく息を吐いた。

「大丈夫?」

「大丈夫です。ホントに心配かけてすみません。

さっ、行きましょう」

サトルは強がって、先頭切って歩き出した。


 登り坂の、何回目かのカーブを曲がったところで、木の枝や葉っぱの塊が見えてきた。それが四神を形作ったオブジェであることは、説明が書いてある案内板をみるまではわからなかった。

“花*四神”

それが、オブジェの名前だった。

 子供くらいの大きさがある。もちろん4つ。

「これ、四神なんですよね。なんか微妙ですね」

サトルは首を傾げた。


「そうよね。ちょっとわかりづらいわよね。

 あ、あれが、朱雀よね。きっと。

 なんか、空飛ぶ、恐竜みたいだけど」

二人ともキミの隣にいる朱雀と見比べてしまった。

「それでも朱雀ってわかりますよね。

 青龍はあれで、白虎はこっちでしょ」

サトルはオブジェを指差しながら言った。

「残っているあのオブジェ、あれ、なんなんだか、わからなくないですか?

 でも、他の3つが確定しているんだから、あれは玄武でしょう。

 結局、玄武は消去法じゃないとわからないって事ですよね」


「そうよね。玄武って、わかりづらいかも。

 じゃあさ、サトル君って、これが玄武って、どうしてわかったの。

歴史とか、詳しくないって言っていたじゃない」

キミはサトルの隣に浮かんでいる玄武を指差した。

「ゲームです。スマホの。高校生になってスマホ買ってもらったんですけど、それからゲームやり始めて。

 キミさんはパ○ドラってやっています?」

「ううん。聞いた事はあるけど、やったことはないわ」

サトルはスマートフォンを操作して、キミに画面を見せた。

「こんな風にいろんなモンスターがいて、これを集めるんですよ。

 その中に、四神ってのがあって……、これが玄武です。

 最初はまったくスルーしていたんですけど、よく見たら、玄武って亀と蛇じゃないですか。これに気が付いた時、びっくりですよ。

 亀と蛇って言ったら、カービィじゃないかって。

 それで、玄武っての調べたんです。そしたらカービィにそっくりな絵があって。それで、カービィは玄武なんだって気がついたんです。

 その後も、色々調べようとは思ったんですけど、文字を読んでいると眠くなっちゃうし、意味わかんないし、途中で挫折してしまいました。結局よくわからないままなんです。

 ま、カービィはカービィだって、自己完結しましたね」

「なんか、らしい」

キミはくすくすと笑った。

「キミさんは?

 キミさんはどうして朱雀ってわかったんですか」

「教科書に出ていたのよ。学校はあんまり行かなかったけど、教科書は時々見ていたの。歴史の教科書にでていたのよ」


 二人は、まだ続いている坂を、再び昇り始めた。ほどなく、お椀をひっくり返したような土山が見えてきた。

「もしかして、これが古墳ですか。

 なんか、古墳ってインパクトに欠けるかもしれないですよね。ただの盛り土に見えてしまいますもん」

「確かに」

キミは小さくうなずいた。


 坂を登り切った所に、コンクリート造りの小さな建物が見えた。

“高松塚古墳壁画館”

高松塚古墳から出土された壁画の複写が展示されている。

 二人は中に入って、見学することにした。


 中はしんと静まりかえっていた。歩く音にも気を使う。小さな展示室には、1組の観光客がいるだけだった。

 壁画の複写は、やはりガラスケースの中に展示されていた。

 サトルとキミは思わず、玄武と朱雀に目を向けた。キトラ古墳の壁画の前で、2匹が変わったことを思い出したのだ。

 玄武も朱雀も、何の変りはない。静かに浮かんでいる。

「ここは、大丈夫みたいですね」

サトルの言葉に、キミはうなずいた。2人はゆっくりとガラスケースの前に進み出た。

 

 複製は精巧にできていた。消えかけたような感じも、細かく再現されていた。

「朱雀がいないですよ」

サトルはガラスケースの中をのぞき込みながら、朱雀を探した。

「朱雀は壊されちゃったんだって。墓泥棒が盗掘する時に壁を壊して、その時に朱雀は壊されたんだって。

 ほら、ここに書いてあるわ」

「ひどい話ですね。

 朱雀。かわいそうに」

サトルはキミの朱雀に手をのばした。

 キミはそのサトルの仕草を、穏やかな目で見つめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ