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スタートアップ!:イチから始める異世界起業  作者: キョウペイ
マッチングモデル:冒険者ギルド
19/28

物件探し5 憑依

「アリス! 大丈夫か!?」

「…………」

 アリスはうつ伏せに倒れたものの、顔だけはかろうじて横を向いていた。しかし、その顔の表情は普通ではない。まるで魂が抜けてしまったかのようだ。目を開けたまま、無表情の状態で固まっている。

 颯真はアリスの体を揺すろうと考え、手を伸ばす。だが、触れる直前に考え直した。無闇に動かして何かあったらどうするのだ。

「息は……」

 耳を口元に近づけて呼吸を確かめる。……が、息づかいを感じない。息をしていない。

 颯真は自分の血の気が引いていくのを感じた。もし、このままアリスが死んでしまったら。それだけは嫌だ。絶対に嫌だ。

「アリス! アリス!!」

 頼む。頼むよ。ここで終わりじゃないだろう。そんなバカなことがあってたまるか。

「アリスッ……!!」

 ――その時。

 颯真の願いが届いたのかは、定かではないが――。

「――ッは!? は、ぁッ……はぁ……」

 アリスが息を吹き返した。

「アリス!」

「……ふ、ぅ」

 アリスが床に手をつき、体を起こす。そして正座の体勢になり――。

「……よ、し……成功」

 ――第一声が、それだった。

「……あ……? え……?」

 突然の出来事に、理解が追いつかない。一体、何が起こっているのだ。

「いそ、げ……急げ……」

 アリスはそう言うと、部屋の隅に向かって歩き始めた。入り口から見て右手前にある角へ進んでいる。その歩みは重く、まさに一歩一歩といった様子だった。

「アリス……?」

 動きがおかしい。そのうえ、言葉も途切れ途切れだ。

 ――まるで、人格が変わってしまったかのようだった。

 …………。

 ……人格が、変わる?

 ぞわりと、颯真の背筋に悪寒が走った。

 『家の中で突然人格が変わったかのようにふるまい始め、少ししたのちに糸が切れた人形のように倒れたのだという。その後、その若い女性はピクリとも動かず、死亡していたという』――。直近の買い主の男性が連れてきた、若い女性についての話がフラッシュバックする。

 ――同じだとしたら、死ぬ。

 アリスが部屋の角で膝をついてしゃがみ込む。それから何かを探すように床板を触り始めた。

 ――死なせない。

 颯真は瞬間的に駆け出していた。アリスの正面に回り込み、その両肩を掴む。

 顔を上げたアリスと目が合う。そして颯真は言った。

「アリスを、こいつを返せ。今すぐに」

「放し、て……。時間、がない、のだ……」

「時間を掛けたら、こいつが死ぬんだろ?」

「な、なぜそ、れを……」

「お前の前科を知っているからだ」

「……私、には……やらなきゃ、いけないこ……とがあるの、だ」

 アリスは床を右拳で叩く。弱々しく、何度も何度も。

 考えろ。ただアリスを返せと言っても返してくれない。なら、交渉の方向性を変えろ。アリスに扮した奴は、なんと言っていた? 何を望んでいる?

 いや、望みなら今言ったじゃないか。やらなきゃいけないことがある、と。……だったら。

「お前のやりたいことを、俺たちが代わりにやってやる。だから、こいつを解放しろ」

「う、そだ……。絶対、やらな、いのだ……」

「嘘じゃない! 俺たちはこの家の、謎の現象を解明するために来たんだ!」

 その言葉が、疑念を打ち破る。関係を作る礎となる。

「……っあ」

「お前が、原因の正体だろう」

「……う、あぁ……!」

「もう一度言う。お前のやりたいことを俺たちがやってやる。だから、こいつを解放してくれないか?」

 アリスが――アリスに扮した何者かが顔を伏せる。それから、かすかな声で言った。

「……分か、った。しん、じるのだ……」


  ◇◇◇


 暗闇の中にいた。いや、無かもしれない。

 遠くから声が聞こえる。

 自分は誰だ? ――あたしは、アリスだ。

 この声は……颯真? 颯真が自分を呼んでいるのか?

 ぼんやりとした意識が、徐々に鮮明になっていく。体に神経が通っていくのを感じる。

 筋肉が動く。体に力を込められる。

 背中側に硬いもの感じる。これは……床か。柔らかな感触を全身に感じる。これは、衣服か。

「――アリス! 生きてるか、アリス!」

 颯真の叫び声。うるさいなぁ。自分は大丈夫だっての。

 ――意識、感覚が正常に戻った。

 アリスは、両目をゆっくりと開く。心配そうな颯真の顔が近くにあった。

アリス「そろそろ章設定をしないといけないわね」

颯真「なんで?」

アリス「このままだと、かなーり長く『マッチングモデル』が続いちゃうから」

颯真「確かに、そうかも」

アリス「マッチングモデルを大枠にしようと思ってるわ」

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