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スタートアップ!:イチから始める異世界起業  作者: キョウペイ
マッチングモデル:冒険者ギルド
18/28

物件探し4 お部屋チェック

 これが……それなのか?

「二番目の買い主の女性の血?」

 アリスも同じ疑問を持ったようだった。

「血って、落ちないものなのか?」

「このくらい乾いて黒くなっちゃうと、水拭きしてもなかなか落ちないと思う」

「なら、この状態で次の買い主も暮らし続けたってことか?」

「そうじゃない?」

「こんな血痕、嫌だと思うんだけど」

「なんか上に敷くとか、方法はあるでしょ」

「あ、そうか」

 話しているうちに緊張もなくなり、アリスと颯真はついに部屋に足を踏み入れた。とりあえず血痕の前まで移動する。

 この部屋の広さは、人が二十人は入れるくらいあった。奥の壁に扉が二つ付いており、左奥には二階へ続く階段がある。

 二人は最初に、二つあるうちの右側の扉へ向かった。扉を開けると、別の部屋に繋がっている。その部屋は長方形をしており、入ってきた広い部屋の三分の一もない空間だった。

「ここはキッチンね」

 とアリスが言った。

「キッチンか」

「火と水の装置もあるし」

「火と水の装置?」

 颯真が首を傾げると、アリスは「あれ」と言って壁際のあるものを指差した。

 それは、率直に言うとシンクとコンロに近いものだった。色もシルバーでいかにもそれっぽい。

「料理に使うのか?」

「そうよ」

 完全にシンクとコンロだった。

 この部屋には、先ほど入ってきた扉の対角線の位置に、別の扉がある。二人はその扉に歩み寄った。

 薄いツマミを回し、回転式の鍵を内側から開ける。続けて扉を開けた。ここは勝手口らしく、扉の先は裏通りに通じていた。

 二人は台所を抜け、広い居間に戻る。次は、入り口から向かって左の扉を開けてみた。

 二畳くらいの狭い部屋だった。平べったいオフホワイトの陶器のようなものが、床に半分埋め込まれている。前方には鉄製のレバーがあり、右奥の壁には黒い箱のようなものががある。

 完全に和式のトイレだった。

「これはトイレだろ?」

「えっ、正解。なんで分かったの?」

「俺の世界でもこんな感じだし」

「へー、そうなんだ」

 まあ、今は洋式が主流だけどね。

 トイレを出る。階段を上り、二階へ。二階は区切りのない一つの空間だった。一階の総面積の七から八割くらいの空間が、そのまま一つの部屋となっている。

「広いわね」

 家具や調度品が一つもないため、余計に広く感じる。

 階段を降り、一階へ。一通り見て回った。

 なんとなく血痕の前に立つ。颯真はふと思ったことを口にする。

「これさ、なんで新しくしないんだろうな?」

「ん? 新しくって?」

「家を買えるくらいならさ、血の付いた部分くらいも取り替えて新しくできるだろ?」

「確かに。……あれじゃない? 大事な証拠だから弄っちゃいけないとか」

「あー、理由としてはありえる」

 アリスと颯真は家の中を見回した。今のところ何か起きる気配はない。

 不可解な現象の謎を解明しなくては、この家は手に入らない。解明の糸口として、何か起こることを家を回りながら待っていたのだが、そう都合よくはいかないようだ。

「何か起きてくれないかしら」

 そう言って、アリスが血痕の端に沿ってグルグル歩く。

「意識を失う、人格が変わるって、どういうことなのかしらね?」

「憑依でもされたとか」

「何に?」

「二番目の買い主の霊」

「そんなまさ、か……」

 アリスの無駄なグルグル歩きが突如として止まる。

「あ、れ? 何か、おか……しい、わ…………」

 アリスの目が大きく開かれる。崩れるように両膝をつき、次の瞬間――。

 ――バタリと、うつ伏せに倒れ込んだ。

「アリス!?」

 颯真が声を掛けるが、返事はない。

 ついに何かが起こった。起きてしまった。起きることを待ってはいたが、実際に起こると焦りが止まらない。颯真はアリスに駆け寄った。

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