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スタートアップ!:イチから始める異世界起業  作者: キョウペイ
マッチングモデル:冒険者ギルド
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物件探し3 事故物件

 中央広場から北東。一等地のやや外れにある街中。

 オスカーの告げる『価格の付いていない物件』は確かにそこにあった。

「……ここよ」

 アリスと共にその建物を見上げる。見た目は何の変哲もない、木材とレンガの二階建てだった。普通の家にしか見えない。

「何もおかしな様子はないな」

「そうね」

 入り口の扉にはアリスの言った通り、貼り紙がしてある。文字は読めないが、立ち入り禁止と書いてあるようだ。そして紙の右下には、オスカーの店の印と同じ印があった。

 颯真は先ほどの、オスカーへのアリスの追及を思い出す。

「よくできたな、あんな問い詰め方」

「あたしは有能だからね」

「半分賭けみたいなもんだったろ」

「あたしの中では八割くらい自信があったのよ」

 アリスがスカートのポケットから鍵を取り出す。オスカーから貰った、この建物の鍵だ。色は黄土色。複数の切り込みが入った前部を持つタイプで、後部は紐が通せそうな輪っか状になっている。

 アリスが鍵を回す。カチャリと硬い音が鳴った。それから何の警戒もなく、アリスは扉に手を掛けようとした。

「おい、気をつけろよ。死ぬかもしれないんだぞ」

 『死ぬかもしれない』とオスカーが語ったあと、その理由を簡単に聞いていた。

 彼曰く、この家では不可解な現象が起こるらしい。物が勝手に動いたり、急に意識を失ったりなど。それが起こるようになったのは、ある死亡事件のあとだという。

 その死亡事件とは、この家の二番目の買い主である二十代の女性の死亡事件だ。ある日、買い主の女性のものと思われる血が、部屋の床に広がっていたのだという。しかし、奇妙なことにその女性の肉体は発見されなかった。いくら捜索しても身柄が見つからないため、その女性は死亡扱いとされることになった。買い主の女性が死亡扱い――つまり、いなくなったため、この家は再度『事故物件』として売りに出されることになった。

 事故物件となったこの家を次に購入したのが、五十代の夫婦だ。しかし、入居してすぐに、物が勝手に動く、不審な物音がするなどの不可解な現象が発生し始めた。それだけならよかったのだが、重大な問題が一つ起きてしまった。それは、入居者の婦人が家の中で突然意識を失ったことである。一回だけならまだしも、それが何回も起こった。そのため夫婦は気味悪がって、この家を手放してしまった。

 最後――最も直近にこの家を購入したのが、三十代の男性だ。先の二件の事象もあり、不可解な現象が発生する家として面白半分で購入。物が動くなどの現象が、やはり再度発生した。そんな中、またしてもある重大な問題が起こった。買い主の男性が連れてきた若い女性が、家の中で突然人格が変わったかのようにふるまい始め、少ししたのちに糸が切れた人形のように倒れたのだという。その後、その若い女性はピクリとも動かず、死亡していたという。買い主の男性は、自分もそうなるのではないかと恐怖し、逃げるようにこの家を手放した。

 オスカーはそれ以降、この家を売りに出すことをやめた。これ以上無駄な被害者、犠牲者を出さないようにするためだ。それと同時に、この家の悪評が他の物件の売買に影響しないようにするためでもある。『価値が付いていない』というのは、そのような過去の出来事に起因していた。

「どうせ偶然でしょ。大丈夫よ」

 アリスはその過去の出来事を偶然と思っているのか、特に気にもせず扉を引き開けようとする。

「これだけいろいろ起きてて、偶然はありえないだろ」

「じゃあ仮に偶然じゃないとして、どう気をつければいいのよ」

「……そう言われると何も言い返せないけどさ」

「ほーら、そうでしょ。結局は行くしかないのよ」

 それに、とアリスは続ける。

「オスカーに言われたでしょ? 不可解な現象の謎を解明しないと、この家を売ることはできないって。1000ゼニよ、1000ゼニ。こんな立派な家を1000ゼニで売ってくれるのよ、原因を解明できたら。これを逃す気?」

「逃せない」

「だったら覚悟を決めてよ。あたしはもう決めたわよ」

 アリスに言われ、颯真も覚悟を決める。そして、アリスは扉を引き開けた。

「お邪魔し……」

 ――妙な違和感を覚えた。

 部屋の床の中央辺り、面積にして三分の一ほどが、妙に黒い。だがよく見ると、素材として自然に黒いわけではない……らしい。……何か、黒い液体のようなものが、へばりついて固まったような――。

 …………。

 扉を開けた状態で二人して固まる。

「……なんだ、これ」

「……く、黒い飲み物でも、ぶちまけたんでしょ」

「……かなり大きな容器だなぁ」

 観察していると、アリスが言った。

「……これ、血よ」

「……血?」

「血は時間が経つと黒くなるのよ」

 血だと思って再び見てみれば、確かに血に見えなくもない。時間が経ち、乾いて酸化した血と言える。……だが、これほど大量の血が出る原因とは一体。

 ……いや、原因はある。正確には、あった。

 この家の二番目の買い主である二十代の女性。失踪した彼女のものと思われる血溜まりがあったと。

アリス「待たせたな!」

颯真「お待たせしました」

アリス「力を溜めてた!」

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