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スタートアップ!:イチから始める異世界起業  作者: キョウペイ
マッチングモデル:冒険者ギルド
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冒険者ギルド4 マーケットリサーチ

 受付員から説明されたものを要約。

 依頼を出すにあたり、冒険者ギルドへの仲介料が発生する。仲介料は二つから構成されており、純粋な仲介料と依頼の掲載料である。

 純粋な仲介料とは、その名の通り、仲介してもらうための手数料のこと。依頼者に冒険者を引き合わせる作業の対価だ。

 依頼の掲載料とは、依頼を冒険者受付の依頼一覧に載せるのに掛かる料金のこと。掲載料は一日単位で、日数によって変動する。決めた日数が経過しても依頼が受注されない場合、その依頼は依頼一覧から除外され、追加の掲載料を払うと再掲載することができる。また、期限前であっても、追加の掲載料を払えば期限を延長することもできる。

 ここからが重要なのだが、前述の仲介料は固定制ではない。仲介料の基本額に重み――レートをかけた金額が、最終的な仲介料になる。レートは何で決まるかというと、報酬の金額である。冒険者に渡す報酬が高いほどレートも段階的に高くなり、結果として冒険者ギルドに払う仲介料も高くなるようだった。

「説明ありがとうございます」

「お役に立てれば幸いです」

「依頼するわけじゃなくてすみません。失礼しました」

 颯真は受付員に会釈し、先ほどまでいた椅子に戻った。アリスの帰りを待つ。数分も経たずに彼女も戻ってきた。再び隣り合って座る。

「ただいま」

「おかえり。どうだった?」

「不満点は二つあった。一つは、仲介料が高いこと」

「やっぱりそう思っているのか」

 具体的にどのくらい仲介料が取られるのかは分からない。だが、実際の依頼者が『仲介料が高い』と思っているというのは事実だ。一人に訊いただけでは調査とも言えないが、今はどうしようもない。

「もう一つは、依頼者受付が冒険者受付と同じところにあること。なんというか、冒険者に見られている感じがして嫌なんだって」

「ああ、プライバシーか」

「ぷら……え、何?」

「プライバシー。他人に知られたくないなー、ってこと」

「ふーん。そんな依頼者もいるのね」

 颯真はふと思い出す。一瞬見えた、居心地の悪そうな女性の顔を。

「さっきのあの顔はそういうことか」

 情報が徐々に集まっていく。おぼろげながら、『戦略』が見えてきた。

 依頼者側の情報の次は、冒険者側の情報が欲しいところだ。一応冒険者であるアリスに訊いてみてもいいが、できれば関わりのない人の方が望ましい。

「アリスってさ、冒険者の知人とかいないか?」

「いるけど。でも、今ここにはいな――」

「――アリスか?」

 不意に二人の後ろから声を掛ける人物がいた。アリスと颯真は揃って振り向く。

「やっぱりアリスじゃないか」

「あ、テッド」

 アリスにテッドと呼ばれた男性は、見た目三十代くらいの優男だった。茶色の短髪に、すらりとした体、そして高い身長。いかにも女性の評価が高そうな人である。

 テッドは二人の対面側の椅子に座った。彼の視線が颯真に向く。

「アリス、この方は?」

「ソウマ。あたしが召喚しちゃったの。異世界の人よ」

「その特別な格好も、異世界の?」

「なんかソウマの世界だと、仕事はこの格好でするらしいのよ。前にも言ったけど、あたしって起業を目指してるじゃない? だから、こう、形から入ろうと思って」

 説明としては省略しすぎな気もするが、大方はテッドに伝わったらしい。

「ソウマが、アリスの目指す道の手助けになるんだろう? だから、ソウマの世界の真似をしてみた。そんなところだろう? お前は目的のためになんでもするからな」

「そうそう、その通り。ソウマ、この人はテッド。あたしと同じ冒険者よ。何度か一緒に仕事したこともある」

「テッドだ。よろしく、ソウマ」

「よろしくお願いします。テッドさん、と呼んでもいいですか?」

「構わないよ」

 気さくな人で助かった。さて、冒険者のマーケットリサーチを始めよう。

 颯真は姿勢を正して言った。

「テッドさんに訊きたいことがあるんです」

「何かな?」

「冒険者をやっていて、冒険者ギルドに対しての不満などはありませんか?」

「それはここで訊いていいのかい?」

「…………」

 ここは冒険者ギルドの建物内。冒険者も関係職員も多数いる。

 冒険者ギルド内で冒険者ギルドの不満について尋ねる。地雷原でタップダンスである。

 …………えーっと。

「……場所を変えても、よろしいですか……?」

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