八
「顕現せよ、エストック」
「出でよ! 雷の剣斧!」
ローシェの手にエストックが、フィアの両の前腕には装着される形で、雷状の剣斧が現れる。
「フィア、その筋肉男は頼んだわ。私は、あっちの二人を相手するから」
「任せて!」
ローシェは、フィアの返答に微笑を浮かべ、二人の男に向かって駆け出す。
「お前一人で大丈夫か?」
「そっちこそ舐めないで! さっきまでの私とは違うよ!」
フィアは距離を詰めていき、右前腕の剣斧で突く。
男は、首を横に傾けて避ける。
だがフィアは、さらに追撃していく。
拳をぴたっと止めると、剣斧が付いている右前腕を、男の首目掛けて振る。
上体を反らしてかわされるが。
フィアの追撃はまだ終わらなかった。
前腕を右に振った反動を利用して、剣斧が突き出ている左拳で殴りかかっていく。
男はかわしきれず、胸部を突かれる。
「ぐっ!」
フィアは、ゆっくりと剣斧を引き抜いた。
屈強な男は、胸部と口から血を流しながら、地に倒れる。
「倒したみたいね」
背後から声が響いた。
振り向くと、ローシェがいた。
二人の男は倒したらしい。
死体となって地面に転がっている。
「ローシェ······」
「フィア、まだ任務は終ってないわ。行くわよ!」
「うん!」
二人は館の中に突入していった。
邸内にも敵の裁司者がいた。
二人は裁きの力を使って倒していく。
「フィア、二手に分かれて抹殺対象を探すわよ」
「了解!」
二人はそれぞれ探していくが、警備を担当している敵の裁司者しか見つからない。
数十分後。
ローシェは敵の裁司者と戦っていた。
手にしていたエストックで、敵の腹部を貫く。
エストックを引き抜いたところで、聞き覚えのある声が響く。
「ローシェ! 対象はどこにもいないよ!」
フィアはそう言いつつ、ローシェに駆け寄る。
「フィア。······そんなはずないわ。どこかにいるはず」
「馬鹿め······いくら探した所で······見つかるはずねえだろ」
息も絶え絶えの、敵の裁司者がそう言った。
ローシェは、倒れ込んでいる敵の腹部を蹴りつける。
男は咳き込む。
「何か知っていそうね。ねえ······死ぬ前に指を一本ずつ斬られたい?」
男は、ローシェの冷たい視線と言葉に観念する。
「分かった······話す。······都市の外れに······研究所がある。都市を出て······南だ。そこに······雇い主がいるはずだ」
「そう。ありがとう」
ローシェはエストックを、男の左胸に突き立てる。
「フィア、聞いたわね! 行くわよ!」
「了解!」
「見えてきたよ! ローシェ!」
「何があるかわからないから、気を引き締めるのよ」
二人は今、馬に乗った状態で、都市から南の少し離れた所にいる。
視線の先には、背後に森林を構えた巨大な建築物があった。
徐々に距離が詰まっていき、目の前まで来たとき、馬を降りる。
二人は、扉に近付く。
「開けるわよ」
ローシェは、ゆっくりと扉を開けた。
中は、一際明るく照らされていた。
造りは、一階の一部屋のみで、広く高さもある。
「ローシェ······あれ······」
フィアは指差す。
差した先には、大きな円形状の容器があった。
幾つも。
それと比べて、小さい円形状の容器はさらに多くある。
そして、中に入っているのは大型と通常の異形だ。
異形というのは、動物等がニファフトの起こす現象により進化を遂げた姿で、人に害をなす存在だ。
ちなみに、ニファフトというのは大気中に存在しており、それが起こす現象はあらゆる生物、自然等に影響を及ぼす。
「不味いことになったわね······」
ローシェは呟く。
「遅かったではないか!」
突如、声が響いた。
ローシェとフィアは、声のした方を見る。
そこには、六十代らしき男がいた。
恐らく、この男が抹殺対象だろう。
「フィア、殺すわよ」
「了解!」
二人は、男に向かって駆け出す。
その時、男は両手を掲げた。
すると、爆発が起きる。
ローシェ達は、咄嗟に踏み止まった。
爆発は、異形の入っている容器を全て割っていく。
「儂の勝ちだ!」
幾つもの割れた容器の中から、異形が出てくる。
ローシェとフィアの表情に、緊張が走った。




