五
「こちらの部屋で御待ちです」
礼服を着た男性は、そう言って扉を開ける。
ローシェとフィアは、部屋の中に入っていく。
「失礼します」
二人はそう言い、会釈をする。
背後で扉が閉まる音がする。
それと同時に「よく、来たな」と、活力を感じさせる女性の声が響いた。
二人が顔を上げると、二十五歳位の女性が椅子に座りながら、机の上で足を組んでいる。
このような豪快な座り方をしているが、外見はかなりの美人だ。
肩甲骨辺りまである赤い髪に、長い前髪は真ん中で分けて額を出している。
瞳は青色。
若干たれ目だが、自信に満ちた目付きをしている。
体型は細身で、身長はフィアより高い。
胸は豊満だがフィアに負けている。
服装は、白のワイシャツを第二ボタンまではだけさせ、黒のネクタイを着用。
下には、黒のタイトスカート。
ベルトは暗い茶色。
足元は、紐で締めるタイプの黒のブーツだ。
上着は襟が立っている型で色は黒。
左胸のところには、裁司者を示す天秤と剣の紋章が施されている。
女性はその上着に袖を通さないで、両肩に覆い被せていた。
「フェンダント司令、どのような用件ですか?」
ローシェは問う。
「お前達二人に、任務だ」
司令の返答に、ローシェは顔色を変える。
「任務の内容は、反乱を企てている元裁司者の抹殺だ。場所は都市ヘンドラー。詳細の地図は後で渡す。他には、仲間に現役の裁司者が複数いる。それとペットも飼っているようだぞ」
ローシェは訝しげな表情をする。
「ペット? ······ですか?」
「ああ。それもとびきり、凶暴なペットだ。気を付けろよ」
フェンダント司令は含み笑いをする。
「以上だ。準備が出来次第出立せよ!」
「了解しました!」
ローシェの返事の後に、フィアも「了解しました」と続く。
「······何だ? 元気がないな、フィア?」
「そんなことないですよ」
フィアは空笑いをする。
「それなら良いが······任務に支障ないようにな」
「はい、分かりました。失礼します」
続いてローシェも「フェンダント司令、失礼しました」と会釈をする。
二人は、部屋を出ていく。
扉を閉めて、暫く通路を歩く。
無言が続く中、ローシェは唐突に口を開く。
「フィア······まだ気にしてるんじゃない······?」
「······やっぱり、ローシェにはばれちゃうか。でも大丈夫だよ。任務には影響しないようにするから」
フィアはそう言うが、ローシェは心配だった。
任務に支障があれば、まずフィア自身が危ないからだ。
だが、ローシェは彼女の言葉を信じて、それ以上何も言わなかった。
二日後。
太陽が沈んで三時間が経過した頃。
都市ヘンドラーにある一つの豪邸の周囲に、ローシェとフィアは待機していた。
豪邸の門前には裁司者らしき男性が二人。
庭には、五人いる。
それらの裁司者を満月が照らしていた。
二人は頃合いを待っていた。
ローシェは豪邸の後方で、フィアは正面の藪に潜んで。
「それにしても暇だな」
門番の一人である裁司者が欠伸をして退屈そうに言う。
「なんにもないしな。まあ、何かあっても困るけどな」
もう一人の男も気怠げに答える。
フィアはその隙を見逃さなかった。
(今だ!)
「雷よ······我が敵を一掃せよ······飛雷」
フィアがそう呟くと、雷状の何かが迸った。




