四
彼女、ローシェは精神的に疲れていた。
会いたくない二人と話したからだ。
一人はフランツ・アノマール。
何かと、私達シュヴァルツに食ってかかる。
まあ、裁司軍ヴァイスと暗殺部隊シュヴァルツは仲が悪いので、いさかいが起こるのは彼とだけではないのだが。
もう一人は、セリス・K・ファイスニッド。
セリスは、ローシェを競争相手として認識しており、いつも張り合ってくる。
フランツより、人としてましなのだが。
ローシェにとって、何かと疲れる二人だ。
(そういえば······!)
ローシェはフィアの方を見る。
すると、顔を俯かせて今にも枯れてしまう花を思わせるような、表情をしていた。
「ローシェ······ごめんね」
その声は若干、震えていた。
「······」
ローシェは掛ける言葉が分からない。
二人は黙り、静寂が暫くの間続く。
十数秒が経った。
その時静けさを破ったのは、フィアの方だった。
「······もう大丈夫だから」
そう言うフィアの声に、震えはなかった。
だが、大丈夫なはずがない。
実の兄にひどいことを言われたのだから。
ローシェはそれを分かった上で、いつものように振る舞う。
「そう。それなら良かった。フィアが静かなんて、らしくないしね」
「ひどいな。それじゃ、私がいつも五月蝿いみたいじゃないか」
「そうじゃないの?」
「もう、ホントに怒るよ」
「冗談よ」
二人が微かに笑い合っていると、足音が近付いてくる。
その足音は、段々と大きくなっていき、やがて訓練場の入口で止まった。
扉が開かれる。
そこに立っていたのは、裁司者でもない礼服に身を包んだ男性だった。
「ローシェ・アイスハイト、フィア・オーヴァルの両名ですね?」
「そうよ」
ローシェは、表情を引き締めて答えた。
「司令官から、御呼びがかかっています」
「分かりました。行きます」
ローシェとフィアは、男性の後を付いていった。




