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 休んで数分が経った頃、突如足音が響く。

 その足音は複数ある。

 二人は、音のする入口に顔を向けた。

 すると、ローシェは冷たい目付きへ変わる。

 フィアは逆に、弱々しいまでに顔を俯かせる。


 入口にいたのは、白の上着を羽織り、白のシャツに黒ネクタイ、下はグレーのズボンと黒のベルト、黒のショートブーツを身に付けた連中だ。

 そして左胸には一様に、下に天秤、上に一本の剣といった紋章がある。

 その胸の紋章は、裁司者であることを示している。


 一人の男が進み出る。

 「おい! ここは俺達、裁司軍ヴァイスが使う! シュヴァルツの奴らは出てけ!」

 艶やかな明るい茶髪の男性は、ポケットに手を入れながら、強く言い放つ。

 「あら、随分な物言いね。アノマール。ここは、私達暗殺部隊シュヴァルツの訓練場なんだから、出ていく必要はないわ」

 ローシェは、女豹のような目元をきつくし、相手を睨む。


 「あいにく、空いてるヴァイスの訓練場がなくてな。出ていって貰わないと困るんだ。それとも裁司者同士、闘いで決着をつけるか? アイスハイト」

 アノマールも、琥珀色をした切れ長の目で睨み返す。

 「望むところよ」

 「ふんっ、英雄と同じ力を持ってるからっていい気になるなよ?」

 「あんた殺されたいの?」

 ローシェの態度が急に変わる。

 先程とは違い、殺気を感じる位凄みがある。

 ローシェは右手をかざす。


 「ちょっと待って! ローシェ!」

 フィアは、ローシェの前を塞いで止める。

 「なんだ。お前もいたのか、フィア」

 アノマールは、嫌悪するかのようにフィアを見る。

 フィアが相手に向き直ると、その口から「フランツ兄さん······」と言葉が発せられた。

 「兄さん等と呼ぶな。虫酸が走る」

 フランツは、嫌悪と怒りをあらわにしている。

 「······」

 フィアは、その言葉を聞いて押し黙る。


 「アノマール! あんた!」

 ローシェは右手をかざして裁きの力を使おうとする。


 「そこまでですわ!」

 突然響いた声は、ローシェを制止する。

  その気品を感じさせる声の主は、外見も同様だった。


 波打った金髪の右側面を結わいており、前髪は左に分けている。

 瞳は宝石のように透明な青。

 耳には、黒い十字架のイヤリングを付けている。


 服装は白の上着、左胸には裁司者を示す紋章がある。

 中に着ているのは、上下一繋がりのタイトなミニスカートで、紫色の三本のラインが縦に走っている。

 足元には、膝丈程まである黒いブーツを着用している。


 その容姿を見たローシェは、「げっ、あんた」と言葉を洩らした。

 「止めるな、セリス」

 「そうはいきませんわ、フランツ。わたくし、中隊長としていさかいを見過ごせません。やると言うのなら、上に報告しますわよ?」


 「ちっ、分かったよ。」

 フランツは、ローシェに対して背を向ける。

 その場を去る際、「いい気になるなよ。七光りのセリス、それに英雄もどきのアイスハイト」と微かな声で呟いていった。


 「ふう、さて。ローシェ・アイスハイト! また会いましたわね!」

 セリスは右手で指差す。

 「私は会いたくないけどね、ファイスニッド」

 「くっ!」

 セリスは精神的に、打撃を食らったようで言葉に詰まる。


 数秒後、セリスは唐突に口を開く。

 「わたくし、負けませんからね! セリス・K・ファイスニッドの名に誓って! それでは、また会いましょう」

 そう言いきると去っていった。

 「なんなの? 一体······」

 ローシェは疲れた表情をあらわにした。





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