十五
ローシェの問いに、フィアは答える。
「軍が奮闘してるよ。巨大な異形も残り一体だし」
「そう。それなら良かったわ」
セリス達は戦いの流れを掴んでいた。
砲台型が放つ裁きの力が、巨大なゴリラの顔面に命中して目眩ましになる。
その隙に、近接型が脚を攻撃していた。
バランス型、技巧型は巨大なゴリラの攻撃を防いでいく。
「そろそろ、決めますわよ」
セリスは右手を前へかざす。
「顕現せよ、我が盾」
巨大な盾が宙に現れる。
「転ぜよ!」
その掛け声と共に、巨大な盾の端々に刃が生えていく。
「切り裂かれなさい!」
巨大な盾は、ゴリラ型の巨大な異形目掛けて放たれた。
だが、異形は両手で挟むようようにして、刃の生えた盾を受け止める。
「なっ!?」
セリスは驚愕の余り、一瞬固まる。
巨大なゴリラは盾を放ると、一歩踏み出す。
すると、地響きと共に裁司兵数名が、脚の下敷きになって絶命する。
「フランツ! 動きを止めるのですわ!」
「了解した! 荒ぶる自然よ、力を貸したまえ! 拘束する土砂!」
フランツがそう言葉を発すると、巨大なゴリラの周囲にある土が舞い上がる。
その土は、ゴリラ型の異形に巻き付くようにして、動きを封じた。
「これで今度こそ終わりですわ!」
セリスは右手を前へかざし、力を使おうとする。
だが巨大なゴリラは、咆哮を上げる。
そして、巻き付いた土を力任せに破った。
「何だと!?」
フランツは、破られると思ってなかったようで、大層驚く。
セリスも同様だ。
その異形の強さを見た、裁司兵達の間に困惑が走る。
「皆さん、落ち着きなさい!」
セリスは、兵達に呼び掛けるが全く効果がない。
それどころか、裁司兵達の動揺は増していく。
「一体、どうすれば······」
セリスは、打開策を考えながらそう呟いた。
戦況が、良くない方向に傾いたのを見ていたローシェとフィア。
「フィア、行くわよ」
ローシェは、体を起こす。
「行くって······戦う気!?」
「そうに決まってるじゃない」
「でもローシェは、まだ回復しきってないし危ないよ!」
フィアは、ローシェの前に立ちはだかり止める。
それでも、ローシェは強い眼光で見据え、言い放つ。
「どいて、フィア。私ならあの異形を倒せるの」
その言葉に、フィアは答えない。
暫く、二人は何も言わず立ち尽くしていた。
「本気なんだね······?」
フィアはようやく口を開いた。
「本気よ」
「分かったよ。私も一緒に戦って援護するから、無理はしないでよ」
フィアは溜め息をつく。
「分かったわ、フィア。それじゃあ、行きましょ」
ローシェはフィアと共に、戦いの場へと向かっていく。
「今だ! 大型の異形よ、奴等を蹴散らすのだ!」
男は命令を下す。
命令された巨大なゴリラの異形は、屈んで拳を振り下ろした。
裁司兵の悲鳴が上がる。
巨大なゴリラの異形は、次々に拳を振り下ろしていき、裁司兵を殺していく。
「くっ、何とかしませんと······」
セリスは右手を前へかざす。
「顕現せよ、我が盾! 転ぜよ!」
その言葉と共に、刃の生えた巨大な盾が宙に現れる。
「行きなさい! 我が刃の盾よ!」
セリスが刃の生えた盾を放とうとする。
その時、「私達も加勢するよ!」とフィアの声が響いた。
「オーヴァル!? それにアイスハイトも!? もう大丈夫ですの?」
セリスは、近付いてきたローシェに問う。
「まだ、本調子ではないけれど大丈夫よ」
「そう、無理は禁物ですわよ」
「それより、私に勝算があるわ」
「それは本当ですの?」
「本当なのか、アイスハイト?」
セリスとフランツは最初疑うが、ローシェの強い眼差しを見て信じる。
「それで、どんな方法ですの?」
「まだ、実戦では使ったことのない力なのだけれど、使うまでに時間を要するのよ。だから、三人には援護してほしい訳」
「分かりましたわ」
「そんな不安要素のある力に頼らなくてはいけないのか。だが、仕方ないな」
「任せて、ローシェ!」
「任せたわよ」
ローシェのその言葉で、フィアは異形へ向かって、セリスは左へ、フランツは右へ散っていった。




