十三
「ローシェ!? どうしたの!?」
フィアは、ローシェの肩を揺さぶる。
その様子を見て、セリスとフランツが駆け寄ってくる。
「どうしたのですか?」
「ローシェが······ローシェが······急に倒れて······!」
「とりあえず、落ち着くのですわ」
セリスはそう言って、ローシェを観察する。
「······これは、裁きの力を使いすぎたせいですわね。休めば大丈夫ですわ」
暫くして、セリスはそう言った。
「そうだったんだ······良かった······」
フィアは、安堵の表情を浮かべる。
「フィア・オーヴァル、あなたはアイスハイトに付き添っていなさい。あとの戦いは、私達がやりますわ」
セリスは、フィアに背を向けると右手を振って、残りの巨大な異形に向かって歩み出す。
フランツはローシェを一瞥すると、何も言わずにその場を去っていく。
フィアは、二人が戦いに戻っていくのを無言で見送った。
裁司兵達は、狼型の巨大な異形に苦戦していた。
そのため、兵達の数も半分の百名程に減っている。
残っている者達は、ある程度の強さを備えているからか、持ちこたえているが。
「何をやっていますの!」
突如、セリスの声が響いた。
彼女は続けて「もう大型の異形は、残り二体ですわ! 早々に片しますわよ!」と声を張り上げる。
「もう、残り二体······」
「さすがセリス中隊長!」
皆朗報を聞いて、やる気を見せ始める。
「私に作戦がありますわ! 近接型は脚先を攻撃なさい!」
指示通り、近接型の裁司兵達は脚先を攻撃していく。
「次に、砲台型も脚を狙うのですわ!」
砲台型の裁司兵達は、脚目掛け裁きの力を放つ。
そして命中。
狼型の巨大な異形は、鳴き声を上げて身体のバランスを崩した。
「今ですわ、フランツ!」
(やれやれ······)
めんどくさそうに、フランツは右手を前へかざす。
「荒ぶる自然よ、力を貸したまえ! 拘束する土砂!」
彼がそう言葉を発すると、巨大な狼の周囲に異変が起きる。
周囲の土砂が宙へ舞い上がり、次にその全てが巨大な狼を拘束するように、身体に巻き付いていった。
「今の内に総攻撃ですわ!」
セリスはそう言い、右手を前へかざす。
「顕現せよ、我が盾。転ぜよ!」
複数の円い盾が宙に現れ、その端々には刃が生えていく。
「切り刻まれなさい!」
セリスは、刃の生えた盾を、時間差で一つずつ放っていく。
一つ目は異形の眼を切り裂き、視界を封じる。
二つ目からは、首や脚、胴目掛けて放った。
他の裁司兵達も、異形の身体に乗ったりして攻撃を重ねていく。
巨大な狼は、そのまま攻撃を喰らい続け、数分後には動かぬ屍と化していた。
「これでいよいよ、あの異形のみですわね」
セリスは呟いた。
ゴリラ型の異形に乗った男は、余裕そうな笑みを浮かべ、口を開く。
「ふはは! この最後の異形は、先程のとは比べ物にならんぞ!」
男は、そう高らかに叫ぶと、異形に命じて地に降ろして貰う。
そして裁司兵達を指差すと、「大型の異形よ! あやつらを蹴散らすのだ!」と声を張り上げた。
ゴリラ型の異形は、地響きを立て一歩を踏み出す。
その様子を見て、セリスも裁司兵達に命じる。
「近接型は脚を集中攻撃、砲台型は顔を狙いなさい! バランス、技巧型は援護ですわ!」
裁司兵達は、セリスの指示通りに力を奮っていく。




