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 「仕方ない。やるしかないようね。フィア!」

 「うん!」

 フィアは右手を前へかざす。

 「雷よ!」

 その言葉と共に、宙に斧の刃部分だけが複数現れる。

 「我が敵を一掃せよ! 飛雷!」

 雷の斧は、それぞれ回転しながら異形の群れに向かっていく。


 そのまま、狼型の異形群に命中していった。

 だが、倒れない。

 微かな傷は、負っているようだが。


 「無駄だ! この異形共は、普通のとは違い強化されているのだ! そして、(わし)の言うことにも従順じゃ。さあ、蹴散らせ!」

 男は、ゴリラの大型異形が差し伸べた手の上に乗る。

 他の異形達は、ローシェ達に襲い掛かっていく。

 「フィア! 態勢を整えるわよ!」

 ローシェは撤退していく。

 「分かった!」

 フィアも追随する。


 二人は建物から出て、止めてある馬に近付く。

 馬に乗ると急いで走らせた。

 東に向けて。

 背後では、大型の異形達が先導して、建物を壊し出てきた。


 「ローシェ、どうするの!?」

 「王都に行くわ! そこまで行けば、ヴァイスの援軍が期待できるから」

 「分かった。そこまで行けば良いんだね。」




 十数分後、異形達との距離が縮まっていた。

 「やばいよ! ローシェ!」

 「焦らないで、フィア。なんとかするわ。波打つ(つるぎ)よ。熱き力と共に顕現せよ。フランベルジュ」

 ローシェの手に、波打った両刃の剣が現れる。

 「燃えなさい!」

 その言葉通り、ローシェ達の後方に炎の壁が出来上がる。


 だが異形達は、難なく炎の壁を突破していった。

 「······なんとかならなかったわね」

 「そんな!? 期待してたのに!」

 「仕方ないじゃない」

 「ローシェ、どうするの!? このままじゃ追い付かれるよ!」


 フィアは後ろを一瞥(いちべつ)する。

 「やばっ!」

 フィアは、思わず声が出てしまった。

 会話している間に、後方の異形達が眼前にまで迫ってきているからだ。

 狼の、大型異形の牙が二人に襲い掛かる。

 「ローシェ! 後ろ!」

 フィアは、攻撃が迫ってきているのを知らせた。


 二人はなんとか、馬を斜めに走らせて回避する。

 だが、攻撃はまだ終わらなかった。

 さらに、狼の異形群がローシェ達の馬に群がり、噛み付いていく。

 馬は、鳴き声を上げ暴れていき、横に倒れていった。

 二人は咄嗟に、自ら背から落ちて受身を取り、転がっていく。


 転がるのが止まると、二人はすぐさま起き上がる。

 その起き上がりざまの隙を狙うかのように、フィア目掛けて蜂の大型異形が迫っていく。

 「フィア!」

 ローシェはエストックを顕現して、助けようと駆ける。

 蜂の異形の方が速いので、間に合いそうにないが。


 蜂の針がフィアに当たりそうな瞬間。

 巨大な盾が現れた。

 正確には、南西の方角から飛んできたのだ。

 その盾は、蜂の針を防ぐ。

 ローシェとフィアは、驚きの表情を浮かべる。


 「間に合いましたわね!」

 ローシェは、この声を聞いて誰か分かった。

 この状況を、何とかしてくれた者が誰かを。

 声のした方を見れば、右側面だけ髪を結った金髪の女性がいた。

 上着は、裁司者を示す剣と天秤の紋章が入った物であり、裁司軍ヴァイスに所属している者だった。

 そうセリス・K・ファイスニッドだ。


 それと隣にはフランツ・アノマールがいた。

 フィアの兄であり、同じ琥珀色の瞳を持っている。

 彼もまた、セリスと同じ裁司軍ヴァイスに所属している。


 「あんた達、何で······」

 ローシェは呟く。

 「そんなことより、目の前の異形を片しますわよ!」


 セリスは右手を前へかざす。

 「顕現せよ。我が盾」

 すると、宙に巨大な盾が現れる。

 「転ぜよ」

 セリスがそう言うと、盾の端々に刃が生えた。

 「倒してしまいなさい!」

 刃の生えた盾は、水平になると蜂の大型異形目掛けて、進んでいく。


 そのまま、大型の異形に命中。

 身体(からだ)を切り裂いていった。

 「まず、一匹目ですわね」

 「ふん! たかが一匹倒した位で勝った気かな?」

 ゴリラの大型異形の手に乗った男は、薄笑いを浮かべる。

 「これでもそんなことが言えるのかしら」

 セリスは後方を見る。

 後ろには二百数名の裁司兵達がいた。

 「なっ! だがこちらも数はいる。さあ異形共、蹴散らしてしまえ!」

 異形の群れが、セリス達に向かって前進していく。


 「近接型の裁司者は前進なさい! 砲台型は後方で攻撃を、技巧型、バランス型は支援ですわ!」

 「了解です! 中隊長!」

 「了解であります! セリス中隊長!」

 セリスの指示通りに、皆動いていく。


 「私達もやるわよ、フィア!」

 「うん、ローシェ!」


 各々、戦いに臨む態勢に入っていった。





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