新たな家族として迎えることができなくてごめんな
ある日のこと。
僕は通学路として車の通りは少なく、人通りの多い道を使っている。
「あれ? こんなところにダンボール箱、置いてあったっけ?」
僕はそのまま通り過ぎようとした時、あるものを見つけた。
学校の帰りにミカンが入っていたダンボール箱が街頭の近くに置いてある。
確か、僕が学校に行く時はその箱、置いてあった記憶がない。
「くぅーん……」
ダンボール箱からイヌの鳴き声が僕の耳に入ってきた。
小柄で茶色の毛並みのよいイヌが悲しそうに鳴いている。
その時の表情はしゅんとした表情をしており、「行かないで」と言われているようだった。
僕を見て再び「くぅーん……」と鳴く。
「僕に鳴かれてもなぁ……」
僕はそのイヌの頭をそっと撫でると、嬉しそうに尻尾を振っている。
「水でも飲むかい?」
「くぅーん……」
僕は空になった弁当箱と学校帰りに買った冷たいペットボトルの水を取り出し、そこに少し水を入れ、そのイヌに差し出した。
「冷たくて美味しいぞ?」
僕は残った水を1口飲む。
そのイヌも少し警戒しており、おそるおそるその弁当箱に舌を伸ばした。
ペロペロペロペロ…………。
少しずつではあるが、水がなくなっている。
「あははは……よほどのどが渇いてたんだな」
僕はまた頭を撫でる。
父さんも母さんもイヌが好きだったし、僕も大好きだった。
しかしながら、僕の家でイヌを飼うことができない。
なぜならば、妹が動物アレルギーだからだ。
「ごめんな……新たな家族として迎えることができなくて……」
僕はぼろぼろと涙をこぼしながら両手で撫でまくる。
しかし、そのイヌは僕の手を振り払うかのように首を激しく振った。
そして、僕の頬を伝う涙を舐めた。
「ありがとう。そして、ごめんな」
それは今まで誰かに愛されてきた。
今まで愛してくれた飼い主が経済的な理由か何かは分からないが、突然さよならを告げなければならなかったのだろう。
また誰かに愛されるといいねと思いながら、僕はその場から立ち去った。
あのあと、新しい飼い主が見つかったみたいです。
2016/08/20 本投稿