第4話 魔物襲来!
魔物。それは、人間をはじめとするフェルナース大陸の住人たちから忌み嫌われ、恐れられてる邪悪な怪物だ。
神話によれば、奴らのご先祖様はその昔、どこからともなくフェルナース大陸にやってきて、神々に喧嘩を売った大悪魔なんだとか。激戦の末、神々にぶっ倒されたそいつは、死ぬ間際、自分の血肉に魔法をかけて、恐るべき魔物たちを生み出したそうだ。まったく、迷惑な話だぜ。
……で、俺は今、その魔物たちと戦ってる。人間や妖精、小人の天敵と。
まず最初に現れたのは、頭が左右に一つずつ、合わせて二つある魔犬、双頭犬だった。数はデュラムが言ってた通り、三匹だ。
一匹がデュラムに飛びかかり、もう一匹がサーラに駆け寄る。最後の一匹が木々の間を走り抜け、俺に襲いかかってきた。耳まで裂けた口をくわっと開けて、二対の鋭い牙をむく。両顎の間で、ねばっこい唾液が糸を引いた。
こんな犬っころに、殺られてたまるかってんだ!
奴が跳躍して、俺に食いつこうとした瞬間、剣を左から右へと一閃させる。横薙ぎの一撃が、魔犬の頭を真っ二つに断ち割った。
真横に吹っ飛び、地面の上を転がって、腐葉土にまみれる双頭犬。だが、あいつはその名の通り、左右二つの頭を持ってる。俺が叩っ斬ったのは右の頭。残る左の頭は、まだ生きてる!
魔犬が跳ね起き、ぶるぶるっと首を振る。助走をつけて再び跳躍。投げ槍みてえにこっちへすっ飛んできたが、俺はとっさに体をひねってかわした。奴の顎が固く閉じ合わさりながら、目と鼻の先を通り過ぎていく。
「危ねえ……!」
かわすのがあと一瞬でも遅れてりゃ、のど笛を噛み砕かれてたに違いねえ。
ほっと胸をなで下ろすことができたのも束の間、双頭犬が三度飛びかかってくる。
「ったく……! しつこい奴だぜ!」
俺は横っ飛びに飛んで魔犬の牙を避けつつ、剣を振り上げた。そして――。
「お返しだぜ!」
双頭犬と擦れ違う瞬間、奴の胴に振り下ろす!
白刃が魔犬の脇腹をばっさりと切り裂き、ぱっくり開いた傷口から血がほとばしる。まるで洋墨みてえな、どす黒い血だ。
胴体に深手を負った双頭の魔犬は、俺の前を勢いよく横切った後、地面に激突。激しく身をよじってもがいてたが、やがて二、三度痙攣して動かなくなった。
「まず一匹……!」
俺がそう言った直後、デュラムの槍が二匹目を串刺しにする。続けてサーラが、杖で三匹目をぶん殴って昏倒させた。二人とも、素早いじゃねえか。
だが、気を抜くにはまだ早い。今、右手で何かが、バサッと羽ばたく音がしたような……。
「伏せて!」
いきなりサーラが大声出した。なんでだよ、なんて考えてる暇はねえ。魔女っ子に言われるまま、地面に突っ伏す。次の瞬間、頭上を何かが疾風の速さで通り過ぎた!