第1話
~この作品はクトゥルフ神話の作品です。~
この文は5月29日に行方不明となった野沢忠仁の物であると考えられている手帳に書かれていたものである。行方不明者の発見の参考にするために公表する。
私が岩手県見境市にできた、ビッグバンを再現する国際リニアコライダーの研究員として、岩手の山奥に来てから10年が過ぎた。
最初の頃は右も左も分からなかった私だったが今では他の研究員に教える事ができる位にはここに慣れてきた。岩手の自然豊かな山奥は、東京のアスファルトに囲まれた私からしてみればとても新鮮であり、嫁ともうすぐ5歳になる娘と幸せに暮らせている。
電子と陽電子を毎日光速に近いスピードでぶつけていずれはビッグバンを再現するのだが、そう簡単に成功せずにいた。ある日の事、他の研究員から、深夜に不気味な音がするらしいと聞いた。だがここは地下50キロメートルの場所だから、何かの聞き間違いだろうとそのとき私は言い聞かせた。しかし他の研究員からも同じ事を聞くため、私も本当なのではと疑うようになってきた。
それから数日後、今日も進展が無かった研究のレポートを書いている時に、スナック菓子を食い散らかすような音が聞こえた。これが研究員達の言っていた不気味な音なのだろう、私は誰かに外の様子を確かめてもらおうとしたが深夜まで残っていたのは私だけらしく不気味な音に嫌悪感を感じながら、懐中電灯を携えて部屋から出た。