とあるストーカーの日常
主要登場人物
彼女。
美少女
私
ストーカー
以上。
ハジメマシテ、私ストーカーです。
予め自己紹介をする事によって、後々の憂いを断つ。
私ってばなんて頭イインでしょう!
さてさて、相変わらず時間ピッタリで出てきたターゲット…否、愛しの君。麗しき美女…というか美少女なんですけど。
とにかく可愛い彼女が出てきた訳です。自宅から顔を覗かせてキョロキョロと。
フフフ、何度見ても可愛いですね。
こう、あれですね、喩え世界が彼女を殺そうとしても私が護りきって見せますよ。
グヘヘヘ。勇者はその後あれなんでしょ?
キャーステキ!抱いて!
みたいな事を言われるんでしょ?知ってます。
昨晩はオタノシミ?アッハッハッ、彼女となら朝まで大丈夫ですよ!
おや宿屋の亭主よ、随分と寝不足のようですね。フヘヘヘ。
彼女が移動したので私も移動しましょうかね。
もう、誰ですか?私の肩を叩くのは。
…………。
後ろを振り向けば藍色の制服をガタイのいい身体に身に付けた男。
残念だけど男には興味ないんです。私は彼女を追いかけないといけないので。
え?身分証?
アッハッハッ、私に身分を聞くと言うのかね。なんと日本の公僕は無能なのだろうか!
君はニュースを見ないのか?
新聞を読まないのか?
私の顔など何処にでも描かれているさ!
え?とにかくついて来い?
嫌ですよ。私には彼女を追い掛けるという使命があります。
せっかくかっこよく嘘まで吐いたんですから、はやく私を解放して下さいよ。
だめ?逮捕するだって?
……………。
わかりました。わかりましたよ。犬じゃないんですから、普通に着いていきますよ。
アバヨ!トッツァン!
ハーッハッハッハッハッ!
ゲホ、ゲホ。
最近の警官は鍛えてるんですね。久しぶりに全力疾走しました。
愛しの君はいったいどこか…。
まぁ私の嗅覚をもってすれば、この小汚ない地球の臭いに混ざる彼女の清廉な香りを辿る事も容易い!
あ、ダメだ。
さっきの全力疾走で臭いを嗅ぎ分けてるどころの話じゃない。酸素ほしい酸素。
深く吸って、深く吐いて。
よし。これで大丈夫だ。さて、行きましょうか。
香りを辿る!
あら、こんな所に花が。
アスファルトの上にお疲れ様です。私、ストーカーです。タンポポさんと?ほう、なかなかにキュートな名前ですね。
まぁ彼女の方が百倍程キュゥゥゥウウウットな名前ですけどね!
ウワッ!花の裏から蜂飛んできた!
バカにはしてないのになんて仕打ちだ!
ようやく彼女を見つけました。
電車に乗るようですね。
ふむ、既に改札は通ってしまいましたか。
まぁこういう時に役にたつのはこの手帳ですよ。
彼女の行動範囲など…私が知らないとお思いか!
甘い!甘過ぎますよ!まるで角砂糖をチョコレートでコーティングしてそれをパクリと食べる彼女の顔のように甘いですよ!
あ、妄想です。
さぁて、彼女は何処へ向かうのでしょうかねぇ。
手帳をパラリと捲るとソコに書かれている文字の羅列。
いや、過去の私よ…私達よ。彼女が可愛い事はわかってるよ!わかってるさ!
頼むから降りた駅名ぐらい書こうよ!
風景と彼女を比べるのは解るけどさ!
………仕方ない、切符ではなくカードを買いますか。
背景と彼女がマッチしすぎてヤバい。
これは書かなくてはいけませんね。未来の私よ、私達よ。感謝しろ。お前らの為に書いてやったぞ。
痴漢?
誰がですか!私はストーカーだと言ってるでしょ!第一、テメェみたいなクソババアが痴漢されると思うなよ!
私のタイプは花も恥じらう美少女だよ!笑えば向日葵、座れば水仙、歩く姿は天使な美少女だよ!
お前みたいな、立っても歩いても座っても笑ってもラフレシアみたいな生物じゃないです!
同じ生物である事を詫びてほしいんですが?
アッハッハッ、怒れば枯れたホオズキみたいですね。笑わせてもらいます。
冤罪で捕まる所でしたよ。
いやはや、途中から痴漢から名誉毀損だとか言われて困りました。
勿論の事ながら、ストーカーたる私はそんな罪で捕まる訳にはいきませんので。
私の天使はどこにいますかねー。
あぁいました。
私から逃げようだなんて、オチャメなんですからー。
こんな倉庫街になんの用なんですかね?
あれですか、コッソリ撮影会ですか?
そのネガは私が貰えるんですね、わかります。
おや?
倉庫に入りましたか。
それでは私もコッソリ着いていきますよ。
撮影会は見学させてもらいます。
「いるんでしょ?出てきなさいよ」
バレてた……だと……!?
ふむ、バレてたなら仕方ないですね。
「ようやく来たか、覚悟は決まったのか?」
アッブネーッ!私じゃなかったのか。
あぁ怖かった。
それにしても随分と険悪な雰囲気ですね。出てきた男は人間離れしてイケメンですし。
「お前の命か、この世界だ」
「……ええ」
おやおやぁ。なんだって?
「では答えを聞かせてもらおうか、正義の味方よ」
「私は……」
タイム。タイムですよ。
彼女が性技の味方だという事は私としては非常にありがたい情報ですが、とにかく待ってください。
彼女の命か、この世界?
当然ながら決まってるじゃないですか。
「私の命を…あげるわ。だからこの世界から消えなさい」
「約束は為された。違えた瞬間にこの世界は我らのモノだ」
「ごめんなさい、お父さん、お母さん……」
「お待ちなさい、お嬢さん」
「……あなた、誰」
「ワタクシ、一万と二千年前から貴女を思い続けたストーカーです」
「うわぁ……」
「……随分なモノに憑かれているな正義の味方ゆ」
「言わないで!認めたくない事は脳が拒否してるの!」
「そういう顔もベリーグッドです」
「近づかないで!」
「拒絶は肯定ととります」
「止めてよ!普通に拒絶されて!?」
いやですね。
だって私が近くにいなきゃ貴女は自殺するじゃないですか。
「ふむ…約束は違えられたな」
「違うの!私は死ぬから!」
「どーせ意味なんてないですよ。貴女が死んだところでコイツらはこの世界を食い荒らします」
「知ったような口をきかないで!約束なの!」
約束、が大事なのは正義の味方だけですよ。
コイツらは人間との約束を守るつもりはないんです。その程度知ってます。
「貴様……我らを知っているな?」
「糞虫のコトなんざ、知りたくもなかったんですがね。
ゴキジェットでも掛けてやろうか?」
「……正義の味方より、厄介だ。死ね」
「はは、私がそう簡単に死ぬわ、」
「―――――ッ!?――!」
あぁ何を慌ててるんですか?
というか、世界が回ってる……。
あぁ首を落とされたのか。不覚不覚。
まぁ彼女が生きているので良しとしましょうか。
◆◆◆◆◆
目が覚めた。
目覚まし時計が喧しく俺を起こす前に目が覚めた。
目覚まし時計を見ると、明らかに鳴る時間が過ぎているのだが……。
まぁいいか。今日の予定なんてなかった。バイト先に用事があったような気もしたが気のせいだろう。
明日辺りに店長に謝っておこう。
そんなことよりも、目覚まし時計を見事に止めた原因だろう物体。
赤いインクが着いた汚れた手帳だ。ボロい。
確か俺の部屋にこんなモノはなかった筈だ。あるわけない。手帳に書く癖があるから、これ程手帳は酷使出来ずに新しい世代に交代する。
興味本意で手帳を手にとって、一ページ目を捲る。
『―****年―◆月●●日、世界が滅亡した』
「は?」
思わず声に出てしまった。
日付は今日から非常に近い。一週間以内だ。
何をバカな事を……。
『****年―◆月★日、宅配便が来きた。内容は親からの仕送り。ジャガイモの一つに芽が出てるんだけど?』
それは大変そうだ。
しかし、ページが進んだのに日付は減ったのか。
日付は今日だし。
ピンポーン
「須藤さん!宅配便でーす!」
手帳に書いてある通り、親からの仕送りでジャガイモの一つがアウトだった。
『****年◆月★日――手帳と同じ内容の仕送りがきた。もしかしたら未来予知の手帳かもしれない。まぁ先は白紙だったけど』
『****年◆月★日――店長から電話で怒られたでござる』
ピルルルルルル――
着信は店長だった。
『――店長スルーして、手帳を書く。早計かもしれないので今起こった事、聞こえる事を全部書く。
隣から夫婦の怒鳴り声
理由は昨日の夕飯が無くなっていたから。男弱い』
「アンタが食べたんでしょ!?」
「違う!そこまで食い意地ははってない!」
「もう!今日のご飯を作らないといけないじゃない!」
「作れよ!あ、いやごめんなさい作っていただけると、はい」
『さらに廊下から声。餓鬼が煩い…ッベーヨッベーヨ煩い』
「ッベーヨ…どうしよう、宿題やってネーヨ、ッベーヨ。マジッベーワ」
当てはまってる。
つまり、この手帳を書いたのは………俺?
いやいや書いてないし。ふざけんな。
ページをパラパラと捲り、白紙を飛び越えて最後のページに到着する。
『――どうせ、ここを見る私へ。この白い手帳を見て混乱しているだろうけど、時間がない。
自分が体験した事を書いてほしい。どんな事でもいい。とにかく、◆月●●日に世界は崩壊する。
だから、その日までに起こった事を纏めて書け。情報を集めろ。どうやら世界を救うだなんて面倒な事を押し付けられたらしい』
『――何もなく世界は崩壊した』
『――世界崩壊の原因は宇宙人による進行』
『――原因の宇宙人を捜索しようと思ったけど無理だった』
『――情報を売る職業の人間曰く、宇宙人は知らないが正義の味方がいるようだ』
『――正義の味方の情報を手に入れる』
『――正義の味方は少女だった』
『――少女を観察しているとイケメンが現れて戦いだした。イケメンに見つか●●●』
『――イケメンが逃走してるのをストーキング。イケメン宇宙人の拠点は※※※※※※だ』
『――宇宙人に喧嘩を売りにいく』
『――少女との戦いを見るに普通の人間では太刀打ち出来ない』
『――少女を観察する』
『――少女は美少女だった』
『――美少女と話をした。手帳の事は喋らずに、敵の情報を渡した』
『――美少女に突然喋りかけられたと思ったらそんな裏事情があったでござる』
『――美少女の写真貰った。忘れないようにだって』
『――写真の美少女に話しかけようとしたら逃げられた。頑張って話しかけても近づくなって』
『――美少女を付け回す』
『――ストーカーみたいに美少女の情報を得る』
『――最終日、彼女にようやく追い付いた。倉庫で彼女は命を差し出した。イケメン宇宙人は嗤らいながら世界を崩壊させた』
『――最終日、彼女より先に倉庫についた。●●●●●●』
『――血痕から予測するに彼女より先に倉庫に着けば死ぬらしい。彼女より後に入るしかない』
『――今回は彼女が命を差し出す時に邪魔してみる』
そして白紙のページが捲られた。
手帳から溢れた彼女の写真。
それは、微笑んでたり、泣いてたり、怒ってたり、慌ててたり。
裏に書かれた日付は全て似たようなモノで。
とにかく、俺は……いや、私は彼女をストーカーする事にした。
再度人物紹介
~彼女
正義の味方で宇宙人と戦っている。
何度も世界を守る為に自分の命を捨てる。
ループ時の記憶は残っている。が、自分が死んだあとの世界は知らないのでずっと世界の崩壊の為に死んでいる可哀想なヒロイン
~私
彼女のストーカーになるしかなかった男。主人公。
世界を崩壊させない為に彼女を守るストーカー。
実際その場面に立ち合うまでは信じない。手帳も信じてはいるが、ただの選択肢の一部でしかない。
須藤繰馬【すどうくるま】が本名。
ちなみに
須藤→すどう→すどー→すとー
繰馬→くるま→かー
が元。
~イケメン
宇宙人。虫型というだけ
~手帳
ループする【私】に送られる不思議な手帳。増えるページと滲まない紙で作られてる不思議手帳
~アトガキ
読んで頂いてありがとうございました。
どちらかといえば、二度読み推奨な文章です。
こういったループ物を書きたくて書いてみた次第です。
ループは彼女を助ける且つ【私】生存で抜け出せます。この調子でしらみ潰しでいくならあと幾年かかるんでしょうね。
ストーカーの日常を書いた結果こうなりました、不思議でなりません。
感想、評価などあれば嬉しく思います。
そんな感じで、不思議でもストーカーの日常…
とあるストーカーの日常
これにて閉幕。