表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AAVS‐アーヴズ‐ 若き星と落ちた星‐  作者: 藤原ヒカリ
ウルシード訓練校編
2/9

act1 「選抜試験開始」

side ステラ

万年筆は結局ルームメイトのシャルドネが持っていた。

訳を問いただすと、ただ高そうでいいなと思ったから、だそうだ。うん、今度やったら後ろ撃とう。

私は密かにそう思いながら、先程のハンネトルン大尉との出会いを思いだし、サリバン戦争の事を思い出す。

サリバン戦争。

サハリン大陸はハレケゲニアの北の洋上に浮かぶ大陸だ。ハレケゲニア大陸ほど大きくはないが、島として見るとでかいという中途半端な大きさだ。

サハリンは指導者エドンドリア・アカマライアの元、サハリン正国として建国された。

ようやく国という組織の保護を受けられるようになり、サハリン大陸の人々は歓喜に泣いた。ところが、エドンドリアは政権独占を続け、いつの間にか絶対王政になっていた。エドンドリアの無茶苦茶な命令に振り回される人々は、ついに耐えきれなくなり、ハレケゲニア大陸連合軍やそれに属するスウェーデンやソビエト、日本帝国に助けを求めた。それに応えるため、ハレケゲニア大陸連合軍は政権の交代をサハリン正国に打診するが、正国はそれを拒否。連合軍は武力をちらつかせ、無理に屈服させようとするが、失敗に終わる。業を煮やし、連合軍は軍の派遣を企画、すると先手必勝とばかりにハレケゲニア大陸をサハリン正国は砲撃した。

そして戦争が始まった。丁度このときにAAVS―アクティヴ・アーマード・ヴイークル・システム―の第1世代型が完成。実践テストとして、AAVSテスト1号機“ブラックナイト”、2号機“ホワイトニング”をハレケゲニア大陸連合軍は戦線に投入した。そこで一気にカタがつく…誰もがそう信じた。だが、無理だった。

サハリン正国エドンドリア派も、第1世代型AAVSを持っていたのだ。持っていたのは1機だけだったが、貴重な戦力を対策用に置いておかなくてはならなくなった。何より、最高機密のAAVSを誰がエドンドリア派に漏らした(リーク)したのか、という問題が連合軍内部で露呈し、戦線を膠着させてしまったのだ。その間、エドンドリア派のAAVS“スターバックス”は連合軍AAVS“ブラックナイト”を中破、行動不能に陥れ、コアと操縦者を回収し、破壊。

操縦者は後に死体として連合軍に返還された。

それに危機感を覚えた連合軍は上部を速球に入れ替え、第2世代型の開発を急いだ。

開発の間、2号機“ホワイトニング”と、新たに作られた3号機“サーナイト”、4号機“ジャンジ”の3機で戦線を支えた。

エドンドリア派も、ブラックナイトのコアを使用し、2号機“ロッテリア”を投入。連合軍は第2世代型AAVSの開発と操縦者の育成を急ぐことになる。

が、“魔力炉”の変換効率が悪く、煮詰まってしまった。ところが3号機“サーナイト”の記念すべき戦果にそれは解決された。

エドンドリア派の“ロッテリア”、もとい“ブラックナイト”を大破させ、コアを回収したのだ。

結果、“ロッテリア”は“ブラックナイト”の設計を簡略化し、魔力炉の効率を上げる――つまり、第2世代型AAVSだったのだ。これは幸いとばかりに連合軍は技術を盗み、本当の意味で“ブラックナイト”量産型“ブラックホール”を開発し、エドンドリア派のもう1機“スターバックス”を数量で圧倒。連合軍は波に乗って“サーナイト”の量産型“スカイホーク”でAAVS初の中隊を結成。英雄ハンネトルン大尉もこの部隊“スターズ”に所属した。

AAVS中隊はエドンドリア派の主要となる基地や施設を次々と薙ぎ倒した。そして激闘の末、ついに連合軍はサハリン正国首都サリンバンに到達。

ところが…。

そこでまたもAAVSが現れた。スカイホークやブラックホールより、禍々しく、悪魔のようなそのAAVS“ブラックサタディ”は次々と連合軍AAVSを破壊していった。スターズも例外無く撃破されていく。AAVS以外にこの戦かいに投入された自動車科狙撃大隊や戦闘機連隊はほぼ全滅。中隊から小隊に減少したスターズが無理して繰り出す攻撃でブラックサタディの弾薬や操縦者の持つ魔力を減少させてはいるものの、微々たるものでしかなかった。

ところがここで無敵と思われたブラックサタディの意外な弱点が露呈することとなった。それは“索敵能力”をはじめとした電子機器の脆弱さだ。たまたま偶然周辺にあったレドームとアンテナに弾が当たったのだ。AAVS標準装備の38ミリサブマシンガンが。弱点を晒してしまったブラックサタディは光学センサを頼り無茶な突撃をし、結果、敗北した。そしてそれを撃ったのは、英雄カリウス・ハンネトルン当時少尉だった。


「…はいはい勤勉だねステラは」

私を現実に引き戻したのはシャルドネのあきれた声だった。

「え?」

「サハリンの英雄について勉強してたんでしょ。呟きがよく聞こえてたよ」

シャルドネはそう言うと、ベッドの上に腰かけて、漫画雑誌を広げた。

「あ、あはは」

私は乾いた笑いを漏らしつつ、席を立ってシャワールームへ向かった。

明日だ。

何かと言えば、選抜試験だ。これに受かれば、第2世代型AAVSのパイロットになれる。落ちれば、下士官学校。ようは、士官学校か下士官学校のどちらかに振り分けるための試験だ。ちなみに私はAAVSパイロット志望だ。

「じゃ、先シャワー貰うね」

「いいよ~」

私はシャルドネの返事を聞く前にシャワールームに入っていた。明日に備えて、速く寝よう。



side ウルスラ


私、スウェーデン陸軍志願兵能力測定学校ウルシード校の校長、ウルスラ・リンテット中佐は校長室で彼を待っていた。

彼とは、皆さんご存じ英雄カリウス・ハンネトルン大尉である。どういうわけか、たまたま補充の教員が彼だったのだ。丁度今、彼には自分の部屋を見てこいと言って、部屋から追い出しているのだ。だってその、徹夜のせいで身なりが整ってなくって…は、恥ずかしいじゃない。

そんなこんなで今身なりを整えて待っている最中だ。時計を見ては鏡を見るという行為をして緊張をもみ消す。でも消えない。ばくばくと心臓が五月蝿い。将官クラスの人が来たときより緊張する。

もぞもぞして待っていると、トントンと、丁寧なノックが聞こえた。き、来たッ!

咳払いをしてから、なるべく平静に入室の許可を出す。

「失礼します」

そう言いながら入ってきたのは、ブロンドで美形な、カリウス・ハンネトルン大尉だった。私の前まできてから、ぴしりと敬礼してきた。私も無表情に答礼する。私が右手を下ろすと、彼もその右手を下ろした。

「迷子には、な、なりませんでしたよね、えっと、そうじゃなくて、あ、改めましてよろしくお願いいたします大尉、期待してますッ」

あああああああ!

いきなりやらかした。やだ恥ずかしい、彼がいなかったら恥ずかしくて泣いてたよ、うん。

ていうか変な人とか思われてないよねッ!?

私は頭の中で混乱しつつ、いつも通りを演じてドキドキしながら彼の反応を待つ。

彼は無表情を崩さず、短く「はっ、大丈夫でした、これからよろしくお願いいたします」と答えた。よかった、たぶんセーフ…な筈だ。

「それでは、明日からよろしくお願いします。明日は早速選抜試験ですよ」

「はい。今から楽しみですね。データを見る限り、皆いい筋していますなら」

そう言って彼は微笑んだ。どこか悲しげなその表情が、また美しかった。何故このような表情を刷るんだろう。不安からかな。

「大丈夫ですよ、皆良い子達ですから」

「…はい」

そしてまた、悲しげな表情をするのだった。


side ステラ


私はドキドキしながら、所属する訓練277中隊A小隊の列に並んでいた。

筆記はほぼ問題ない…筈だ。サハリン戦争をはじめとした有名な軍史のほとんどを大雑把とはいえ一夜漬けしたし。

もぞもぞしていると、隣のシャルドネが肩をつついてきた。何いきなり、と抗議を目線で問うと、彼女はパチリ、ウィンクをしてきた。さらに左右の目をリズムよく瞑って見せた。

これはアイシングと呼ばれる暗号で、ようはモールス信号だ。

[あ そ こ み て]

シャルドネの目線が教師陣に向けられる。目線の先にいたのが――なんとハンネトルン大尉だった!

え、なんでッ!

そう思っていると、ふと思いついた。何故、英雄がここにいるのかが。

彼が一線を退いたのはごく最近だ。トラブルその他防止の為、転属先は軍人でもごく一握りしか知らなかったという。

そんなVIPでbigな彼がこんな僻地にいるのは、上層部の意志がはっきり見てとれた。

今でも復帰すれば最強と言われる彼を失いたくないスウェーデンひいては連合軍は敢えて目立たない訓練基地の教官にして、周りから隠し、温存兵力とし、同時に彼に新たな“英雄”を造らせよう、という事だろう。

ま、私にはどうでもいいけど。あ、でも英雄のお世話になれるのは嬉しいな。

「全員傾注」

あ、号令かかった。

私は中央に出た教官を見つめる。

「ではこれより選抜試験を開始するッ!

それにあたり、これから今回の試験について説明する」

教官はそう言うと、今回の試験のルールを説明し始めた。

ちなみに、毎回選抜試験はルールが変わる。状況に対する臨機応変な判断を図るためだと聞いている。私は教官の説明を聞き、要点をまとめてみる。

今回はチーム戦。勝ったチーム、つまり277中隊の3つの中隊のどれかが勝てばその小隊員全員が士官学科に進める。2位だったら下士官学科、最下位だったら再教育となる。

試合形式はサバイバル。敵軍の2個小隊を全滅させる、もしくは全滅するまでいきのこれば勝ちだ。

「いいか、訓練弾だからと言って油断するなよ。最悪、死ぬことを覚悟しろ、いいな」

同じ意味の言葉を二回も繰り返さないでください、私はバカじゃないんですから。

了解、と返事すると、準備が命じられた。作戦会議もこれに含まれる。

私たち277中隊A小隊は黙ってミーティングルームに向かった。

はじめまして、ヒカリといいます。

受験生なのでだんだん頻度下がりますが、よろしくお願いいたします。

また、まだケータイに慣れてないので誤字脱字が多いですがご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ