第8話:スキル確認
アイテムボックス以外にどんなスキルが付与されているのか。それを確かめに行く必要があるな。
「どこかでスキルを確認することはできないのかい? 」
「それなら、そこの露店の占いばあさんに頼むといいです。各地にネットワークを広げていて、ばあさんはみんな鑑定の技能を持ってる凄腕ばかりなのです。なのに、銀貨1枚で鑑定してくれる格安便利ばあさんなのです」
そんな街に一人はいるセーブデータを記録してくれる教会の司祭、みたいな存在がこの世界にも存在するらしい。ただ、田舎にまではさすがに足を伸ばしていないらしく、このボコマズの町ぐらいの中都市には一人はいるようだ。そして、その占いばあさんの前までくる。
「鑑定かい? 」
ばあさんが上目遣いにこちらを見る。
「ああ、頼むよ。自分が何のスキルを持っているかよくわかってないんだ」
「銀貨1枚だ、先払いだよ」
アイテムボックスから銀貨を出し、ばあさんに渡す。
「アイテムボックスを持ってるのはわかってるんだねえ。じゃあしばらく待ちな」
ばあさんが俺の顔を見ながら目を光らせる。しばらくした後、ばあさんの目が光るのが終わり、結果がばあさんの手によって書き出されていく。
「御同輩じゃないか。なんで自分のスキルも知らずにあたしに依頼するかねえ」
そう言われながら書き始められたスキル欄には、カンテイの文字が。鑑定。つまり、俺も鑑定スキルを持っているということなのだろう。確かに、異世界転移じゃ定番中の定番だ。それを持たせておいてくれたということか。神崎さん、隅々まで至れり尽くせりの異世界旅行をありがとう。俺、こっちでもしばらくたくましく生きてみます。
鑑定以外には、タイジュツ、ケンジュツ、ソウジュツ、アンキジュツ……などと並んでいき、どれもレベル1のものが付与されていた。それぞれ体術、剣術、槍術、暗器術などだろう。カタカナだけなので、同音異義語を含んでいる可能性はあるが、おそらくは冒険者としてある程度必要不可欠なものはインストールされている、と考えてみてもいいんだろうな。
スキルの中にアールエムティーというものが存在した。RMT……リアルマネートレード。つまり、現実のお金を異世界のお金に交換するシステムが備わっている、ということなのだろう。可逆性のあるものなのか、不可逆性のものなのかはわからないが、毎月振り込まれる有休分の給料でこっちで楽しめるのは間違いないことになる。
でも、できればこっちのお金はこっちで稼ぎたいからな。できるだけお金には手を付けないように生活していこう。
「さて、スキルも確認したことですし、お昼から何をしますか? 今日一日は私もいろいろお付き合いしますよ! 」
イアンちゃんはどんなに短くても今日いっぱいは付き合ってくれるらしい。これも異世界転移特典みたいなものだろう。
「じゃあまずは、何をするにも今夜の宿を決めてからだな。さっきのお店で宿屋もやっているみたいだったから、近場で申し訳ないけどまた移動してさっきの食堂に戻るね」
「はい、お付き合いします」
イアンちゃんとさっきの銀の卵亭に戻り、宿屋のカウンターに立つ。女将さんらしき人がカウンターにいて、イアンを見るなり驚く。
「イアンじゃないか、久しぶりだねえ。今日もあれのお客さんかい? 」
「はい、そうです。タカナシさんです。タカナシさん、こちらリンカちゃんのお母さんでメリーさんです」
「とりあえず……なあイアンちゃん、週の区切りってどうなってるんだ? 」
一区切り良い所まで宿を借りようと思ったが、こっちで一週間みたいな区切りはこの世界にあるんだろうか。ちょっと確認しておこう。
「区切り……? 十日で一周、という意味ですか? 」
「それも後で聞こう。とりあえず十日分の宿を頼む」
「実際に泊まっても泊まらなくても連続で同じ部屋、十泊って認識でいいのかい? 」
「ああ、冒険者をやるつもりだからな。とりあえず……大銀貨1枚。これでいいかい? 」
「もし途中でもっといい宿や転がり先が見つかったら早めに連絡するんだよ。その時は残りの分は返すからさ」
「そうならないように願ってるよ」
「こっちとしては、転がり先を見つけて連絡がないほうがありがたいんだけどね。部屋の掃除をする手間が省けるからね」
お互い笑い合ったところで、契約成立。部屋のカギを投げてよこしてくる。
「二階の角の部屋だよ。他の部屋より角な分だけちょっとだけ広い。大事に使っておくれよ」
「お世話になりますっと。飯は別で食べるなら食堂でって認識でいいんだよな」
「ああ、それでいい。湯を沸かすときは銅貨2枚だ。できるだけ同じような時間に要求してくれるとこっちは薪の消費が安くて助かるね」
「他の部屋の連中が大体どの時間に湯を沸かしてるのか教えてくれればその時間に間に合うように帰ってくるさ」
「そうだね、大体夜の鐘が鳴る時間には帰ってきて体を拭いて、それから食事って流れが多いね。参考になるかい? 」
「ああ、参考になった。じゃあ、まだ日が高いんでさっそく仕事に行ってくる」
「頑張ってくるんだよー」
メリーさんに送り出されて外へ出る。
「お仕事するんですか? 」
イアンちゃんから不思議そうに問われる。何が不思議なんだろう?
「そうだ、まだ日が高いうちはお仕事の時間なんだろう? 」
「タカナシさんは有休というお休みを楽しむためにこちらに来られてるんですよね? 」
「そうだよ、だから有休を楽しんで、しっかり仕事しないと」
「??? 」
全力で首をかしげているイアンちゃんの背中を押すように、さっそく冒険者ギルドに戻る。
途中、檻の中に入れられた少年少女の姿を見かける。
「あれは……奴隷か? 」
「そうですね、奴隷商の仕入れだと思います。奴隷買うんですか? 」
「いや……奴隷は合法なんだな、と思ってさ」
「そうですね、借金奴隷と犯罪奴隷に分けられますけど基本的には借金奴隷が多いですね。奴隷は”シエキジュツ”という珍しいスキルを使える人が奴隷商の取り締まり人になって、危害や損害を加えられないように絶対忠誠を植え付けた上でああやって時々見世物にして、使い物になりそうな奴隷がいれば買い求めたり、中には借金奴隷になってしまった親類縁者を買い取るなんかの方法で買い上げたりもできるそうです。奴隷の人権は王国法で保障されていますし、サイバルさんが連れてた女性、あの方も奴隷でしたよ」
そうなのか。奴隷が合法ならそういう世界なんだと納得するところだろうな。正義感を振りかざして奴隷解放を求めたところで、きっと奴隷本人から反対されて孤立するケースが出てくるんだろう。危うきには近寄らず……だな……ん? あの女の子のスキルは……これ、放っておいていいのか?
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