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騎士引退したおじさんが、廃村を立て直しつつ、クッコロ少女騎士を鍛えていたら強くなった  作者: 弐屋 丑二
この世界

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50/50

世話になったね

 やはり、群を抜けた才能だと思う。生まれながらの王族、いや王と言ってもよいかもしれない。人を率いていく才能に溢れている。あっさりとこの場を収めてしまった。明らかに団員達の表情が違う。


 カートは皆を見回すと

「では、団長後見役としての初の仕事……言い辛いねえ……ソウバリー!何か良い呼び名頼むよ!」

指名されたソウバリーは落ち着いた様子で

「オーナーってのはどうですか。結局うちはカートさんが居なければ回らねえ。実質オーナーみたいなもんだ」

ブロッサムが立ち上がり指を差しながら

「それ!私も思ってたんだ!取るな!カートオーナー!超かっこいい!」

ソウバリーは相手にせず、カートから顔を逸らさない。彼女は満足げに頷き

「よろしい。今日からオーナーだ。そしてオーナーとしての初仕事は、ヨーグ達、戦死者の遺族への補償と、仕事の斡旋だね」

ソウバリーは頷くと、足元に置いていた革カバンから数枚書類を取り出し、丸眼鏡をかけると

「……オーナー。負傷者も今回の戦では多いんですよ。腕や足を失った隊員も居る。ヴァシルと直接やり合ったヒョヌはまだ入院中で、母親から毎日、抗議の手紙が来てる」

カートは腕を組むと

「ジャキャー。財政状況は?」

静かな黒人女性は微笑むと

「問題無い。グループ全体の経営状況も悪くない。国からの支払いも済んでいる」

この袋小路にたどり着くまでの左右の鍛冶屋や装具屋は、全て傭兵団が金を出して建てたものだ。従業員は手足を失った団員達や戦没者の遺族が多い。他にも飲食店や、服屋、古着屋等、傭兵団が出資している店舗は王都内に多い。カートは商売人としても抜け目無く資金を増やし、王国内に一大傭兵事業体を作り出している。傭兵達は金の匂いに敏感なので、払いが良いカートが慕われているのは当たり前だろう。


 カートは、私と王女を丁重に退席させると、会議室内の扉を閉めた。我々は、傭兵達の護衛付きで、王宮へと行くことになった。何事もなく王宮へと到着すると、王女は微笑み頭を下げてきた。傭兵達と敬礼して見送ってから、傭兵団本部へと一度戻り、会議が紛糾しているので先に帰っていて欲しいと言うカートからの伝言を受け取り、一人、王都から村へと帰ることになった。


 大通りの雑踏に混ざるのは、悪くない気分だった。ここでは私は、ただの誰でもない中年に過ぎない。殺気も覇気も戦場の異常さもない、人々がそれぞれの事情で、それぞれの目的でそれぞれに入り乱れて目的地へ移動しているだけだ。ケンリュウの鍛冶屋へと寄ろうとして

「やめよう」

そう、口について出る。たまには一人になるのも良い。水と食料を買って、歩いて帰ろう。


 郵便屋に寄り、その場で手紙を書く。村に向け、歩いて帰るので遅くなると速達を出す。軽く食事を取り、質屋で買った革袋に水と食料を詰め込んだ。王都では誰も私のことを気にしない。それで良い。私はしがない中年で、公的にはもはや誰でも無い。それが心地よい。


 王都へと出入りする人々が行き交う門を出て、暮れていく日差しに照らされながら歩いていく。少しずつ喜びが湧いてきた。カートは生きていて、王国の憂いは無くなった。これから私は村を復興しながら余生を過ごすだけだ。私に子は居ないし、カートが産めるかも分からないが、そうだとしても2人で残りの人生寄り添えれば十分幸せだろう。


 王都から離れる度、商人や旅行者は減っていき、完全に暗くなった頃、辺りは人の気配が途切れた。明かりを点けようと立ち止まると、背後に突如現れた大きな気配が

「チャスルが世話になったね」

低く優しげな声で話しかけて来る。私は瞬時に覚悟を決める。背後の気配は私が提げている樫の棍棒の間合いギリギリの位置に立っている。身長190センチ、体重は100キロ弱の筋肉質な男性、更に遠巻きに、男の仲間らしき男女10人ほどに囲まれている。


 静かに呼吸をして気持ちを落ち着け

「とうとう、私を殺しに来たか」

背後の男に問うと、甲高い声で笑い出し

「いや、僕は、君は戦場で殺すと決めている。物見遊山さ、安心してよ」

先ほどと違う、高めの不安定な声色で答えてきた。意図が測れず警戒を強めると

「天秤の剣は、本当に持ってないの?」

「……無い。黒い犬が咥えていった」

本当の事を告げ、少しでも惑わそうとするが男は一切気配が揺るがず

「ふーん……黒神の使いかもね。そろそろ時間だ。行こう」

そう答えると、周囲の気配ごと暗闇の中へと消え失せた。

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