7 優しい
「葵、本当にそれでいいのですか?」
「はい。大きさも合っていますし」
「私は大きさの話をしているのではありません。その服男用ですよ? 葵は女性でしょう」
「でも、これ動きやすいから・・・」
「・・・はぁ。わかりました。では、それにしましょう」
と、少々不満を言いながら蒼焔皇子は代金を払いに行った。
何をしているかって?
里に戻って服を買ってる。
皇子達は今夜この里で、寝泊まりする予定だったらしく、ちょうどいいので私も戻ってきて、服を買ってもらうことになったのだ。
もう、体操着とはおさらばなのだ。
「あんたが助けたのが蒼焔様とはお手柄だね~。この国の民全員から、感謝されるんじゃないかい?」
と言うのは里で話していたおばさんだ。
なんでいるかというとこの服屋はおばさんの店だからだ。
「でも危ないから、今度からは一人で行ってはいけないよ」
「はい」
このおばさん、めっちゃ優しい。
「そういや、あんた。今日、寝るとこは決まってるのかい?」
「特に決まってないです。適当に宿でも探そうかと」
(お金はもらったしね)
「この里に宿はないよ」
(ないの!? えっ、じゃあ蒼焔皇子達は!? ついでに普段の旅の人たちは!?)
何も言わなくても、私を見て察したのだろう。おばさんは説明してくれた。
「蒼焔様達は長の家に泊まるだろうね。それと普段の旅の人達も普通は長の家に泊まる。だが、皇子が泊まるとなれば安全面を考えて今夜は蒼焔様達以外泊まれないだろうね」
(確かに、これは無理だな)
「・・・野宿します・・・」
(人生初の野宿か、大丈夫かな?)
「泊まるとこがないなら、ここに泊まるかい?」
「えっ、悪いですよ!」
「気にしなくていいさ。それにあんたは蒼焔様を助けてくれたからね」
優しいぃぃぃ。
「ありがとうございます!」
蒼焔様は代金を払ったら、予定があるからと、足早に帰っていった。
そして夜になった。
そしたらおばさんがご飯を用意してくれた。ご飯までいただけないと言ったら、「作っちまったんだから食べなきゃダメだろう。それともこのまま食べずに捨てろというのかい?さっさと食いな」と言われたのでありがたくいただいた。
そして、今ちょうど食べ終わったところだ。この後いつもならお風呂に入るが千年前の平民の家にお風呂があるとは思えない。
(でも体、洗いたい)
昼間に少し暴れたせいで、汗をかいていた。
(・・・聞いてみるか)
「ヤンおばさん」
「ん?なんだい?」
一応言ってくが私に親切にしてくれているこのおばさんはヤンという名だ。
「体の汗を少し流したいんですけど、どこか場所はありますか?」
「それなら、里の裏の湖で洗うといい。今は夜で少し寒いだろうが人は来ないだろうからね。そうだ、体を洗うならこの布を持っていきな」
ヤンおばさんは大きめの布を渡してくれた。
「いいんですか?」
「あんた、ちゃんと体拭かないと、風邪ひいちまうだろ?」
優しいぃぃぃぃい!
「ありがとうございます!」
ヤンおばさん・・・
優しいです!!