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転生タイムスリップ  作者: Ari
第一章
4/34

3  前世・後編

 目が覚める気配がした。


 (どうして・・・?白竜を倒した人すら、私は殺せないというの?)


 しかし目を開けると今までとは違った。

 周りに死体はなく、私の正面には一人の青年が立っていた。初めてだった。死体が転がっていないのを見るのは。そして、人が立っているのは。

 その青年は紺青色の髪と自信たっぷりな金眼を持つ人だった。その姿を見て改めて確信した。


 (この男なら私を殺せる)


 金眼は力の象徴。力の強い人が持つ。


 (()()()()金眼を持っていない。今なら死ねる)


 そんなことを考えていたら、青年が話しかけてきた。


「お、意識が覚醒したようだな。気分はどうだ?」

「・・・とてもいい気分だよ。やっと死ねるんだから。」

「ふーん。なぁ、ずっと気になってたんだが、お前、戦っている時、体は起きてるけど意識はないだろ?それって記憶にはあるけど自覚はないってことなんじゃないか?」


 私は目を見開いた。

 (驚いたな・・・。気づいてたのか)


「よくわかったね。でもだから何?」

「操られていたと言えば、少しは罪が軽くなるのではないか」

「ふっははっはははは! 冗談はやめて? 私の髪の色を見ればわかるでしょう? 私の中には白竜の核がある。核があるだけで私はもう死ぬ運命なんだよ」


 この青年は何を言っているのか、当たり前のことだろうに。


「白竜の核があるから死ぬ運命? なぜ死ぬと決めつける」

「? だって、核を持つ人は全員殺されて・・・」

「生きてるぞ。その人達は力を制御して自分に害はないと証明した」

「えっ?」

「三分のニぐらいは殺されてしまったが、彼らは諦めなかった。その結果彼らは生きることができてる」

「・・・」

「お前はどうなんだ?諦めずに何かをやったか?」


 その言葉は私の壊れかけた心に響いた。


「私は・・・」

(私は、何をした?

 外れない首輪を外す方法を探したか? 考えたか?

 意識を保つことができるよう努力したか?

 諦めずに何度も逃げようとしたか?

 私は・・・ )


「私は・・・何もしてない。ただ人を・・・殺してきただけ。何も考えないで・・・殺してもらうのをずっと待っていただけ・・・」

(私は、諦めて何もしなかった。そのせいでどれだけの人が死んだか・・・ )


「まだ、やり直せる」

「えっ」

「お前は自分の間違いに気づけた。今からでもその罪を償え。罪を償った後は死んでいった人達の分まで生きろ」


 青年は真っ直ぐな目で私にそう言った。その瞬間壊れかけた心が直り始めた。

(罪を償う・・・、確かに私は償うべきだ)


 私は青年の顔を真っ直ぐ見た。


「罪は償う」

「そうか、じゃあー」

「でも、私は生きるわけにはいかない。」

「なぜ?」

「なぜ?考えなくてもわかるでしょ。私は意識がなかったとはいえ、数万の人達を殺した。その中には王族や貴族もいた。一生かけても償えないほど罪は重い。世界の人々は必ず私を死刑にするよう求めるはず」

「なら俺が減刑するよう言ってやるよ」

(この青年は優しいんだな。私を生かそうとしてくれてる。でも、違うんだ。)


「ありがとう、でも、いいよ。そんなことしなくて」

「お前、何言ってー」

「許せないんだ、自分が! たくさん殺しておいて自分だけが生きていることが!」

「っ!」

「だから、私は死ぬ。死ぬことによって殺してきた人達への償いとする」


 私は魔法陣を創り始める。 ー自爆の魔法陣ー を。


「お前、何やって・・・まさか!」

「あなたも早く離れて、これは自爆の魔法陣。この世界には存在しない魔法。今、創ったものだからどれほどの威力になるのかもわからない。私はあなたを巻き込みたくない。だから早く離れて」


 そう言いながら私も青年から距離を取る。

 青年も離れ出したのを見て、魔法陣に魔力を流した。


(ああ。もっと早く気付いていれば・・・)

 そう思いながら目を閉じる。


 あとは自爆を待つだけ。そう思っていたら、誰かに抱きしめられた。驚いて目を開けると、紺青色の髪と金眼が目に入った。さっきまで話していた青年が私を抱きしめていた。


「っ! 何やってるの!? 速く離れて、巻き込まれる!!」


 私が必死にそう言うと予想外の答えが返ってきた。


「俺も一緒に死ぬ!」

「はぁっ!?」

「それで、お前が来世でも死のうとしたら、また一緒に死ぬ!その次もまたその次もお前が死のうとしたら、一緒に死ぬ!」

「何を言ってー 」

「お前が生きると言うまで、何度だって俺は一緒に死ぬ!」


 その言葉を聞いて、私は純粋に ー嬉しいー と思ってしまった。


 魔法陣が発動した。


 私の記憶はここまで。


 その日、私の一度目の人生は幕を閉じた。




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