31 執務室へ
執務室の前まで来た。
「だ、第一皇子殿下、ここにはどのようなご用件で・・・?」
今、話したのは扉を守っている兵士だ。
おそらく、昨日のことがすでに広まっているのか、顔が真っ青だ。
まあ・・・しょうがないよね。うん。
そんな、兵士を少し哀れに思ったのか、蒼焔様も威圧的に質問することはなかった。
「張白殿に用があってね。扉を開けてもらえるかな」
「い、いえ、あの張白様は・・・」
「何か問題でも?」
「張白様に・・・今は誰も執務室に入れるなと言われておりまして・・・」
「貴様! 第一皇子である蒼焔様より張白の命令を優先するというのか!」
いっつんがキレた。
やめてあげなよ。兵士の顔色が青を通り越して、白くなってるよ。
「五丸、やめなさい。兵士の君、私は君に許可など求めていない。開けろと、そう命令しているんだ」
「ひっ・・・でも、」
蒼焔様は待つのが嫌いなのか、少しイラついて、言葉が強くなってきている。
(しょうがない、ここは私が話をつけよう。女性の方が怖くないだろうし)
私はできるだけ怖くないように笑顔で話しかける。
「落ち着いてください。怖がらせてしまって申し訳ありません。ただ、我々はすぐに張白殿に会わなければいけないんです。そちらにもなにか事情があるようですが、どうにか扉を開けてもらうことは出来ませんか?」
完璧だ。絶対に怖くないだろう。
だが、私の言葉を受けた兵士の人は顔を真っ赤にして固まっていた。
怒らせてしまったのだろうか。
「「「はあーー」」」
後ろでも三人がため息をついている。
なぜだ。
怒らせるようなこと言ってないだろ。
私のそんな表情を見て、察したのか。
「違うよ~。葵、違うんだよ~」
と、亮がそんなことを言ってくる。
いや、なにが?
兵士はまだ固まったままだ。動けよ。
「開けてくださいませんか?」
もう一度聞いてみる。
そうすると、反応がが来た。
「あっ、は、はいっお任せを!! あなたのためならば、いくらでも開けさせていただきます!!」
「お、おう・・・」
随分と勢いよくだが。
「・・・あんま、やるなよ」
そして、蒼焔様にやめろと言われる。
そこは褒めてよ。扉、開けてくれるってさ。
「早く開けてください」
そう言う、蒼焔様に褒めてと目で訴えたが無視された。
「葵~、えらいよー」
代わりに亮が褒めてくれた。
そして、扉が開く。
そこには―
―張白の姿はなかった。
葵は褒めてもらえるとやる気が出るタイプです。




