26 宴会2
三姉妹の顔が笑顔から怒りに変わった。
(・・・しくったな。もっと別の言い方をすればよかった)
すぐに後悔するがすでに遅い。
三姉妹の中で一番下の美蘭が机の上にあった杯を持ち、入っていた酒を私に勢いよくかけてきた。
「この無礼者!! 誰の道を塞いでいるのかわかっているの!?」
そちらこそ誰に酒をかけてるんですか?
と、言いたくなるが反論したらもっとキレるだろうから何も言わない。
だが、逆効果だったみたいで三姉妹はさらに調子に乗ってきた。
「ふん! 何も言えないみたいね! それより何よ、外套なんて着ちゃって、よほど顔に自信がないのね!!」
「こらこら、美蘭、およしなさいな。この世のみんなが私達みたいに美しい訳じゃないんだから・・・ふっ」
「姉様、そんな優しさ、この無礼者には必要ありませんわ。実際ここまで言われても顔を見せないのだから・・・よほど顔が醜いのでしょう。ふふふっ」
思い思いにそういう彼女たちの顔はそれこそとても醜かった。
(別に自分のことがかわいいとか思ってないけど、厚化粧して素顔のわからないあなた達よりは醜くないと思いますけど? ああ、なんか酔ってきた。美蘭め、かけるなら酒じゃなくて水にしろよ。こちとらまだ未成年なんですけど!?)
私は酒にとても弱かったらしい・・・。
足も少しふらついていた。
仕方なく蒼焔様に助けを求める。
(ヘルプ ミー! 蒼焔さ・・・ま・・・顔こっわ!!)
助けを求めるため、蒼焔様の方を向くと笑顔の蒼焔様がいた。
そう笑顔。笑顔なのにとてつもなく怖い。
怒っているのに笑顔でいるとは器用なことをするもんだ。
蒼焔様が怒っているのは誰が見ても明らかだと思うのだが、三姉妹は全然気付いていない。
それどころか、
部下を侮辱しても笑顔でいるってことはやっぱり私達のことが好きなのね!
と見当違いなことを考えていそうだ。いや、あの顔は絶対考えてる。
「ちょっと、邪魔よどきなさい!」
そう言って、私の肩を勢いよく押してきた。
いつもならそれぐらいで倒れることはないのだが、酒で酔ったせいで足がふらつき倒れてしまった。
「痛っ!」
「ふん!! あなたには床がお似合いよ!
蒼焔様! 見苦しい所をお見せしました・・・。ですが、部下の躾はしっかりなさった方がよろしくってよ」
「そうですわ。それに蒼焔様は見目麗しいのですから、あのような顔も見せられない醜い部下は持たない方がよろしいですわ」
「蒼焔様には私達のような美しいものの方が似合いますわ」
三姉妹はそう言いながら、蒼焔様の許可をもらうことなく腕を触ったり組んだりした。
ちなみにいっつんは止めようとはしたが蒼焔様の怖い笑顔で止められ、動けないでいた。
そして、三姉妹以外にも動くものがいた。
「蒼焔様、娘達の言う通りです! あのような醜い者を傍に置くくらいなら、私の娘をぜひおそばに!」
お前もか張白。蒼焔様のあの怖い笑顔がお前には見えていないのか?
いや、三姉妹と張白の言葉でさらに笑顔が怖くなった。
だが、張白は話すことをやめない。
「蒼焔さええよろしければ、ぜひ今夜から! 娘達を傍に置いてやってくれませんかね。絶対に蒼焔様を飽きさせませんよ」
つまりは夜伽はいかがですかと。
ただの馬鹿だな。目先の利益しか見えていない。
「・・・張白殿」
ついに蒼焔様が口を開いた。
その声は低く、冷たく、怒っていることが明確に感じられた。
「っ! なんでしょうか? 蒼焔様」
さすがに張白も感じ取ったらしい。だがもう遅いだろう。
「醜い者とは誰のことを言っているのでしょうか? ああ、もしやこの無礼な姉妹達のことですか」
そう言って、三姉妹につかまれていた腕を振り払う。
「きゃあっ! 何をするのですか!?」
「そうです、女性に向かって!」
「醜いとはなんですか!? 私たちはこの世で一番美しいのに!!」
「黙れ。この厚化粧どもが」
「「「なっ」」」
蒼焔様ー! 本来の性格が出かかってますよ!?
少し長くなったので一旦ここできります。
次回、お楽しみに。




