24 宴会への準備
私はすぐに、渡された服に着替える。
「着替えましたよ」
そう言いながら着替え室から出ると、蒼焔様達が固まった。
どうしたのだろうか。
「どうしたんですか?」
「えっ、あ、いや別に? なあ、いっつん」
「え、ええ、はいいいえ」
いや、どっちだよ。
「ねえねえ、二人とも~正直に言った方がいいんじゃない~」
「「なにを!?」」
「そこまで必死になる~? じゃあ、僕が言ってあげる。葵、とっっても似合っててきれいだよ~」
「あ、ありがとうございます」
真正面から褒められるのは意外と照れるものらしい。
「ほらほら、蒼焔様といっつんも早く言いなよ」
「・・・ま、まあ馬子にも衣裳だな・・・」
「・・・綺麗だと・・・思います」
「っ! いっつん!! 正直に言うなよ」
「蒼焔様、俺は事実を言っただけです」
「ぐっ」
・・・なるほど。いっつんは正直な性格で、蒼焔様は正直ではないようだ。
実際、蒼焔様はまだ十代後半あたり、女性に向かって正直に綺麗とは言えないのだろう。
え? 亮といっつん? 例外なんじゃないかな。
「それよりー、葵の髪と瞳どうするのー? さすがにこのままって訳にはいかないよ~」
(確かに・・・でも、姿を変える魔法は戦闘に関係なかったから、あまり上手に使えないんだよね)
「それは、これを使う」
そう言って出したのは、陶器でできた丸い箱。
蓋を開けると黒い粉が入っていた。
「これは?」
「髪を染めるものだ。瞳はどうしようもないからそのままでいく」
(この時代にはすでに髪を染めるものがあったのか・・・)
「じゃあ、僕が染めるよ~。葵、おいでー」
「あ、はーい」
十分後。
「ふー。できたー! 葵、似合ってるよ~。これ鏡」
「ありがとうございます」
亮が渡してくれた鏡で自分を見る。
(これは・・・タイムスリップする前と全く同じだ・・・それもそうか顔は変わってないんだし・・・それよりも)
「亮・・・髪染めるのうまいですね・・・」
この時代で髪を染めるとなるとそれなりに染めた感があると思うのだが・・・それが全くない。
とても自然で、染めてませんと嘘を言っても疑われることはないだろう。
「ふふん。すごいでしょ~。もっと褒めてくれてもいいんだよ~。あっ、早く蒼焔様といっつんにも見せてあげなきゃ~」
そう言って、走っていく亮。
(思っていたより・・・有能なんだな・・・)
私は、亮を見直すのだった。
そもそも能力が低いと思われてた亮は・・・やはり哀れなのだろう。
私も亮を追って、蒼焔様の所へ向かう。
そして、先ほどとほぼ同じような会話をするのだった。
二十分後
コンコン。
「蒼焔様。宴会の準備が整いました」
案内役が迎えに来た。
「よし、行くか。そうだ葵、お前は外套をその服の上に着ていけ」
「なぜですか? せっかく着替えたのに」
「言ったろ。もしもの時のためって」
「ああ、はい」
(別に隠さなくたって・・・髪は染めたし、瞳は珍しいだろうけどこの時代にいないって訳じゃあるまいし・・・)
蒼焔が外套を着ろと言ったのは別に瞳のせいだけではない。
実は葵の見た目は女神と言われても納得できてしまうぐらい整っている。
言ってしまえば美少女。
だが、残念なことに葵にその自覚はない。
友達からかわいいと言われたことはある。
だが、前世でも今世でも彼氏がいないことはもちろん告白さえしてもらったことはない。
実際は告白できなかった、許されなかったからだが。
故に葵は自分の容姿のことをあまりわかっていない。
これから、蒼焔達は苦労することだろう・・・。
亮は大体何でもできちゃう人です。




