14 出発
葵視点に戻ります。
蒼焔様達が里を出た次の日。
私も準備が終わり、里を出発しようとしていた。
「ヤンおばさん。そろそろ出発しようかと思います」
「そうかい、道中気を付けな」
「はい。短い間でしたが色々とお世話になりました」
「気にする必要はないさ」
ヤンおばさんは優しく笑いながらそう言ってくれた。
(ヤンおばさんは本当にどこまでも優しい。・・・昨日、私の髪と瞳を見せたときも、蒼焔様と同じく、怖がらないでくれたし、「今まで、苦労したね」と声をかけてくれた)
私は昨日の夜、ヤンおばさんならと思い、思い切って髪と瞳を見せていた。
「葵、これを持っていきな」
そう言いながら、ヤンおばさんが何か大きな布を渡してきた。
「これは?」
広げて見るとそれはフード付きのマント―外套だった。
「それを着れば、髪と瞳を隠せるだろう」
「っ!! あ、ありがとうございますっ!!」
私は思わず泣いてしまった。
一昨日会ったばかりの人間に、ここまで優しくしてくれるヤンおばさんには感謝しかない。
「ほら、泣くんじゃないよ。かわいい顔が台無しになっちまうだろ?」
「はい・・・す、すみません」
私はなんとか泣き止む。
「ふっ。短い間だったがこっちも楽しかったよ。また、ここに来ることがあったら、顔を見せにおいで」
「は、はい!」
「それじゃ葵、元気でね」
「ヤンおばさんこそ、お元気で!」
私はヤンおばさんに見送られながら、里を出た。
もらった外套を身に纏って。
「確か東回りに行って、郷で合流だったよね。蒼焔様達は今どの辺りにいるかな? 里を出たのは昨日だから、たぶん今日の夕方ぐらいに着くのかな。なら、私もそれに合わせて走っていくか。合流はできるだけ、早い方がいいと思うし」
里から郷まで距離的には約八十キロ程。
八時間ずっと走り続ければ、一時間十キロ。
「身体強化使えば行けるよね。よし、<身体強化>」
私は身体強化を使いながら、青い空の下を走り出した。
―八時間後―
「あっ、蒼焔様だ」
八時間走り続けたおかげで無事に今日中に、蒼焔様と合流することができた。
第一章はこれで終わりです。
次回からは第二章です!
お楽しみに!!




