12 郷へ向かう者たちの話
里を出て馬に乗り、供と一緒に郷へ向かう紺青色の髪を持つ青年の名は―蒼焔―。
この国の第一皇子であり、次期皇帝。
そんな彼の供の一人がこの青年、五丸だ。
そして彼は今、とても気になることがある。
それは、彼の主、蒼焔がとてもご機嫌なことだ。
あの人はいつも外面をかぶっているせいか、素の時は外面の時のストレスのせいでいつも不機嫌なのだ。
そんな主がご機嫌・・・理由を聞かなければ・・・! と彼は思っていた。
「蒼焔様、ご機嫌なようですが何かあったのですか?」
「確かにー! 素の時はいつも不機嫌なのにねー」
もう一人のお供、亮も気付いていたみたいだ。
「おお、お前らから見ても、俺はそんなにご機嫌に見えるか」
二人の前では蒼焔も本来の性格を出している。
「見えますよ。て、ゆうか、普通の人が見てもわかりやすいと思います」
昨日まで不機嫌だったのに今日朝起きたらこんなご機嫌なら、誰でも気づくだろう。
「ははっ、そうか。お前ら聞いて驚け、俺に忠誠を誓うやつが一人増えた」
「・・・優秀で優しい第一皇子に対してですか?」
「違う。本来の俺に対してだ」
「へぇーーー。変な人もいるんだね」
亮は感心している。だが、五丸はこれだけは訂正しておかなければと思うことがあった。
「亮、それでは俺達も変な人になるではないか。変な人は蒼焔様、一人にしろ」
「はーい」
「おい、五丸。俺が変な人はどういうことだ。亮も納得するんじゃない」
「蒼焔様、あなたは客観的に見て変な人です」
「そうだよー。蒼焔様ー。自覚しないとー」
「何をもって、変な人なのか、納得いかん!」
「「性格変えてるところですよ(だよー)」」
「っ。まあこの話はもういい。で、その俺に忠誠を誓ったやつ誰だと思う?」
「昨日、会った人なら里長・・・違うな。・・・ああ、あのとても強い顔のわからない変な服着た女性ですか?」
「正解だ」
「ちょっと蒼焔様、顔もわからない人を勝手に部下にしないでください」
「顔は昨日、見たから大丈夫だ」
「えっ見たんですか? どういう顔していたんですか?」
「・・・一言で言うならば、あれは月の女神だ」
「?! ちょっ、そっ蒼焔様! 誰が近くにいるかわからないのに、そういうことを言うのはやめてください!」
(この人は、こんな道端で何を言っているのか!)
五丸は慌てて周囲を見渡す。幸い周りには彼達以外誰もいなかった。
それにしても月の女神とは。
月の女神―別名 美の女神
月の女神は数多いる神の中で一番美しいと言われている。それゆえに「月の女神」という称号は国で一番美しい女性に贈られ、唯一名乗ることが許されている。そして国民は、自国の月の女神だけを「月の女神」と呼び、他の人を「月の女神」と呼んではいけない。
「よかった誰もいない。ちょっと蒼焔様!? 月の女神はもういるんですよ!?」
「ふん。気にするものか。俺が皇帝になったら、あいつには「月の女神」の称号を返上させる予定だったからな」
「そうだったんですか!? でも、良いのですか? あの方もほかの女性に比べれば美しいではありませんか」
「お前、目が悪いのか? あいつは美しくもなんともない。どっちかというと醜女に近い方だぞ? あっそうか、お前はあいつの素顔見たことなかったな。あいつは常に厚化粧して、皆の目を騙している。おまけに、親の地位を利用して、無理やり「月の女神」の称号を盗ったどろぼうだ」
「地位を利用していたのは知っていましたが、厚化粧していたとは」
「五丸知らなかったの~? ついでにあいつ、自分より美しいって評判が上がった女の子は全員残虐な拷問して殺してるんだよー」
亮がさらっととんでもない発言をする。
「「なんで知ってんの!?」」
これには蒼焔様もびっくり。
「それはー、ひ・み・つ!」
・・・・・
「んん‘‘、話を戻しますが、蒼焔様に忠誠を誓った人の特徴は?」
「えっと、そうだな、」
二人はそれ以上聞くのをやめた。
亮にはちょっとミステリアスなところがあった。
「美しい白い髪と、宝石のような綺麗な蒼い瞳だ」
(白髪蒼眼!?)
五丸は驚きのあまり固まってしまった。
この話は一話で終わるはずだったのに、1700字を超えてしまった!!
・・・ということで続きは次回に繰り越しします。
お楽しみに!




