9 誓い
「蒼焔皇子!!?」
私に誰何したのは蒼焔皇子だった。
「!? その声は葵ですか!? こんな夜中になにをしているのですか!!」
そう言いながら、蒼焔皇子が里から湖の間にある林の中から出てきた。
「本当に、なにをっ・・・」
出てきたと思ったらどうしたのか、固まってしまった。
「? 蒼焔皇子? どうかされたのですか?」
「葵・・・? その髪は・・・どうしたのですか?」
「えっ? 髪?」
何を言ってるのか、私の髪はフードをして見えないはず。と、思いながら頭に手をやる。そこではじめて気付く。自分がフードをしていないことに。
(そうだ。いきなり気配察知に反応があって、急いで服は着たけど・・・自分の身体能力に驚いて、パーカーを着るのを忘れていた)
まずい
すぐにそう思った。
葵の中での白髪は畏怖の象徴。なぜならその髪の色は前世の世界を滅亡寸前にまで追い詰めた白竜と全く同じ色をしているのだから。
故に葵は誰かがこの髪を見れば、恐れ、自分から離れていくだろうと思っていた。
(・・・せっかく、また会えたのに・・・。前世の記憶がない彼はきっとこの髪を恐れる。・・・私とは二度と会おうとは思わないだろう・・・)
私は髪を見られたことによってすべてをあきらめていた。だが、皇子が次に言った言葉は葵が想像していないものだった。
「・・・美しい・・・」
「・・・えっ」
「はっ。すみません。ジロジロと見てしまって。・・・そのあまりにも美しいものですから・・・」
私は彼が言った言葉が信じられなかった。
(美しい・・・? 彼は今、美しいと言ったの?)
震えた声で私は聞く。
「皇子は・・・・・この髪が・・・怖くないの・・・ですか? 気持ち悪くないのですか・・・?」
「怖い? 気持ち悪い? 何を言っているのですか? 葵の髪は美しいではないですか。それこそ、瞳が金であれば、まるで月の女神ではないですか」
怖くも、気持ち悪くもない。その言葉を聞いて、驚きで声が出せなかった。
一瞬、嘘ではないかと疑ってしまったが彼の目を見れば本気でそう思っていることは明白だった。
(前世では怖い、気持ち悪いとみんな言っていたのに・・・)
「葵? かたまっていますが、大丈夫ですか?」
皇子が心配して声をかけてくれる。
(ああ、この男には何回も助けられる。どんどん借りが増えていく。必ず返さなければ。そのためにも、この男の命を何としてでも救って見せる!)
より確固で堅実な覚悟と誓いを。
私は片膝をつく。
「蒼焔皇子!」
「えっ、あ、はい」
皇子はいきなりのことで驚く。
「あなたはこれから様々な困難にぶつかっていくことでしょう。時にはあなたを殺そうとしてくる者も現れる」
実際、今日襲われていた。
「ですが、その時は私の名をお呼びください。どんな困難も共に歩みます。どんな敵も返り討ちにしてみせます! だから、どうか私をあなたのおそばに」
私は力強く宣言した。
そして、皇子は最初は驚きで目を見開いていたが私の目を見て、宣言を聞いて、真面目な顔になった。
「それは私に忠誠を誓うと、そういうことですか?」
「はい」
「そうですか、ならばその忠誠、受け取りましょう」
(よかった。受け取ってくれた)
これで私は蒼焔皇子の家臣かそれに近いものになることができるだろう。
それなら常とはいわずともできるだけ一緒にいることはできる。皇子の命を狙う愚か者から守ることができる。
「あ、そういえば、あなたに知っておいてほしいことがあるのでした」
皇子がそうだったという感じで私に言ってきた。
(知っておいてほしいこと?)
なんだろうと思いながら顔を上げ、ふと皇子の顔を見た。
私の瞳に映ったのは、
いつも蒼焔皇子が見せる優しそうな瞳ではなく、自信たっぷりなまっすぐな瞳だった。
今回は1600字越え…
いつも通りです! そう、いつも通り!
えっ前回? 前回は・・・しょうがないんです。
湖の話だけで1600字越えはきついんです・・・




