死神からの依頼 後編
私が金属音のした方に向かって歩いていくと、そこには、息が切れかけているカルラと、ふっとばされている知り合いの死神の姿があった。腕輪と奴の顔を見る。間違いない。
そう思いため息をつき、奴に冷たい視線を送る。
「zen01____やっぱり来たのね、ニア」
「ああ、優火、頼みたいことがある」
奴の頼みか、正直に言おう。
___絶対にめんどくさいことであることは確かだ。
なぜなら私は、この死神社長、もといニアとともに、地獄からの要求で、とかなんとかいう理由で、黒竜、魔女、吸血鬼、おまけに元魔王軍幹部の魔族+αを相手にし、魂を刈り取るということをしたことがある。
これは、どう考えても二人でこなす量ではない。
本来ならば、最低でも5〜6人のパーティーを組んで挑むべきだろう。別に戦力的な意味では一人でも勝てないわけではないのだが、これまでやった奴らは馬鹿みたいに硬い、または何かしらの長期戦になるような要素があった。
パーティーを組めたらどれほど楽だっただろうか。
そして、今回もその例に漏れないと考えていいだろう。
「はぁ、一応聞くよ、どうせそれは討伐依頼でしょ?」
「話が早くて助かるな。それじゃあ、依頼は___」
「断る。」
まあ、当然といえば当然である。前科を考えればやる気が失せるのは確かだろう。何なら前回の報酬が未だに入ってきていない。こいつは正直、信頼に値しない。
「____おい、いいのか?それなら報酬は前回の2倍出そう。それでどうだ?」
「その報酬を払っていないのはどこのどいつですかねぇ!?いい加減に払えやこの変人死神!」
払わないうえなにか図々しい事を言ってきたので、つい胸ぐらをつかんでしまった。彼の顔を睨みつけると、なぜかそのご尊顔には疑問符が浮かんでいた。
「ん?いや、払ったはずだぞ?しっかりと届けたと部下からは報告が来ているが?そういう笑えない嘘はやめたほうがいいぞ?」
「は?」
今度は私が疑問符を浮かべる番だった。
こいつは信頼には値しないが、嘘をつくことはあまりない。地獄の裁判官や、閻魔様の前では嘘が通じないということを経験しているし、そのデメリットを十分に理解しているためだ。
そして当然、それならばもう一つの可能性が大きくなる。
「____おい、お前のその部下は誰だ?」
「そうだな、zen06 セルだ。」
どうやらニアもそれを察したらしい。それならば話が早い。
「よし。ニア、あとは分かるな?」
「ああ、ただし、この依頼を受けたら、だがな」
ほんの一瞬迷ってしまったが、この条件ならばいいだろう。
「それなら、その依頼、受けようじゃないか。しっかり報酬は払えよ?」
「わかってるさ。詳細は移動しながら説明しよう。いいよな?」
「ああいいさ。ついでに私の仕事も手伝ってくれないか?」
「それは丁重に断らせてもらうよ。手伝いと称した終身無賃雇用だろう?」
軽口を叩き合いながら、私達は歩みを進めた。
・死神には会社みたいなのがあって、それごとに仕事も違います。ニアの会社は魂を集め、売ったり処理したりするものです。この魂は人間でも買えます。(値段は張るけど)
・死神の鎌はでかいほうが人気です。でもそれなりに使いにくいです。なので熟練の死神ででかい鎌を使っているやつは数えるほどしかいません。その前にやられるからです。ニアはでかいのを使ってます。