外道死神再び
その人物は、私が魔王城を出た直後に現れた。
「…チッ、最悪だ」
死神がよく着ている黒いフード、ギラつく両目、ジャラジャラとした鎖鎌。その条件に当てはまるのは記憶の中で1人しかいない。
「あら、昨日私に負けた死神さんじゃあないですか。なんの御用ですか?再戦なら受けますよ」
「…調子に乗りやがって。まあいいさ。今日は再戦の申し込みじゃない。ちょっとばかりここに用があってな。それでやってきたわけだ」
相手の目を見るが、嘘はついていないようだった。だがこいつはどうも信用できない。やはり一度潰しておくべきか。そう思いもしたが、今は敵意があるわけではなさそうなので、一旦見逃してやることにした。
「で、そっちはなぜここにいる?お前らは何が目的だ?」
すると今度は、手に持っている鎌をこちらに向け、そう問いかけてくる。
「答えてやる義理はないですね。こっちも仕事ですし」
「そうかい。なら、退いてくれ。どかないなら強行突破も考えるがな」
その言葉に応じようとも考えたが、この扉の奥ではお嬢様が戦っている。まだ敵とも味方とも取れない人物をここに入れるわけには行かない。
「悪いことは言いません。あなたこそここから立ち去りなさい。この先は危険です。特に、私に負けてしまうような実力不足の方では」
その言葉が、外道死神の逆鱗に触れた。
「ほぉ、いいじゃねえか。その喧嘩、買ってやるよ」
「喧嘩を売ったつもりはなかったのですが、仕方ないですね。相手してあげましょう」
そのタイミングで、背後にいるトキが震えていることに気がついた。本能的な恐怖だろう。今回に至っては、逃がす以外の選択肢はない。
そう考え、私はトキを抱きかかえた。いわゆる、お姫様抱っこの状態だ。
「トキ、目を瞑っていてください」
私はそう言うと、死神の鎌を避け、まっすぐ走り出した。
「はっ、自殺希望か?お望み通りにしてやるよ!」
死神は、左右に展開していた魔法陣から鎖を伸ばし、先端に付いた鎌を投げつけてくる。そして彼女自身も、鎌を持ちこちらへ突っ込んでくる。
私はその鎖を飛び越えるように飛び上がり、急降下する。着地の直前、それに合わせて急所に当てようと死神は鎌を振るう。
だが私は、それを読んだかのような動きで回避し、死神の後頭部に蹴りをいれる。
そしてトキを逃がすため、鎖鎌が届かない安全圏まで駆け抜ける。
安全圏まで逃げ、トキを見ると、少し震えた様子で目を瞑っていた。
「トキ、目を開けていいですよ。時間はないので、早く逃げてください。やつは私が仕留めます」
トキは頷き、すぐに逃げていった。あとの問題はやつだけだ。
「さぁて、邪魔者は、お掃除しないとですね」
私は腰にさした刀を抜き、再び死神と対峙する。




