シリアルキラーと天才魔法使い
今、私の目の前には、三年前に殺したはずの男、ジャックの姿がある。
「美咲、トキを連れて先に行きなさい。あなた達はこいつと関わるべきではないわ」
私はそう小声で美咲に伝える。多分、彼女はこいつと相性が悪い。経験不足とは言わないが、人質に取られると厄介だ。少なくとも、奴はそういう手を躊躇せずに使う。
それに、もし本気を出すとなれば、彼女を巻き込んでしまうかもしれない。
「…わかりました。ご武運を」
彼女はそう言うと、一時的にエントランスを出た。別ルートから侵入するつもりなのだろう。
「ほぉ、逃がしたか。いい判断だ。お陰で、下手に俺が手を出さなくて済む。」
「ねぇ、一つ聞いてもいいかしら」
「ん、何だ?」
「あなたは、どうして生きているの?」
至極当然な疑問だった。普通、何かしらの固有魔法か、生前に不死の呪いでもかけられない限り、死なないということはありえない。進んだ魔法技術でも、死者蘇生にはまだ至っていない。
「あぁ、そんなことか。簡単さ」
そこで彼が口にしたのは、驚くべき方法だった。
「俺の魂をそのまま違う肉体に移し替えた。死神でもなきゃ知らないような方法さ。お陰で、俺は復活することができた」
魂の入れ替えや移し替え、それは、この世の禁術の一つである。現代において唯一の、一度完全に死んだ人間を素材さえあれば誰でもこの世に呼び起こすことのできる唯一の方法。そのため、すべての国で原則として使用が禁じられている魔法の一つ。
そのため、現代では、方法はおろかその素材すら知られていない。おそらく知っているのは、禁止される前、150年以上生きることのできる長命種か、死神か、あるいはそれに関わるものしか、知ることすらできないだろう。
「…なるほどね。それじゃあ」
私は杖をやつに向けて構え、魔法陣を展開する。
「死んで頂戴」
その魔法陣から、閃光とともに熱を帯びた光線が放たれる。それは、辺りの死体を焼き尽くし、ジャックへと向かう。だがそれをジャックは避け、腰に挿していた剣を取り出し、それに魔力を込める。その剣を振るうと、その斬撃が私の方へと飛んできた。
魔力で障壁を展開しそれを受けると、一瞬のうちに彼が私へと詰め寄り、その剣を私の首筋めがけて振るう。それを私は障壁で受け、同時にもう一つの魔法陣を展開、そしてその魔法を彼に向けて起動。ジャックは背後へと吹き飛んだ。
その隙に魔法陣を展開し、やつに向けて再び光線を放つ。私は当たったと確信したが、そこに彼の姿はなかった。
代わりにその答えとして、背後から私に衝撃が与えられた。
〜補足〜
・魔法障壁は、魔法による攻撃から身を守るための魔法の一つです。魔力を利用しない攻撃ならば発動さえ間に合えば防げます。
・熟練の魔法使いは、魔法障壁を魔法など魔力の込められている攻撃に対して自動で発動できます。ただし一定以上の魔力に対してのみ反応するので、魔力を利用しない攻撃には反応しません。
・魔法障壁の耐久度は、本人の魔力の総量と性質によって変わります。




