外道死神の底力
スポットライトが当たる中、奴ともう一度向き合う。
彼女の顔には、何故か笑みが浮かんでいた。
「ふっ、ハハハッ、そうだなぁ、流石にあれで終わってしまっちゃあ、面白くねぇもんなあ!」
彼女の魔力が地面に展開していた魔法陣に集中する。そして左右に2つずつ、計4つ生成された魔法陣から、鎖が生成される。その先端には、鎌がついていた。
「本気で相手してやる。楽しませてくれよ?」
私は持っている小刀を握りしめ、次の攻撃に集中する。ここは後手に回るべきだろう。さっきみたいなのは御免だ。
そしてその直後、鎖がこちらに向けて放たれる。それを弾きつつ、私は魔方陣がある方へと向かう。だが、すべての鎌を避け、そこに見えた魔法陣にいたはずの死神に攻撃を与えようとするが、
「…いない?」
そこには魔法陣のみがあり、代わりに同一人物であろう魔力が背後に出現した。
「わかってんだよこのバァ〜カ!」
ギリギリ気が付き反応はしたが、派手に背後にふっとばされた。おまけに小刀も折れている。あるのは手持ちのナイフ数本となけなしの魔力だけ。
「…師匠は、この状態でどうするのかな」
当然、あの人ならばこんなことにすらならずもっとスマートで手早く終わらせているだろうが。そうだ、あの人なら___
____あんたは私じゃないの。いくら好きでも尊敬していても、全く同じなんて気味が悪いだけよ。それに、あんたにはあんたの良さがあるのよ。
脳内に師匠の言葉が思い浮かぶ。だが、あの人ならそう言ってくれるだろう。
やってみるしか無い。このナイフで、なんとかするしか無い。
奴の鎖が再びこちらに向かってくる。今度はこれを避けつつやつと戦わなければならない。
鎖を右に避け、奴の攻撃をナイフで受ける。隙があれば反撃しようとは思うが、その隙という隙があまりにもない。流石熟練の死神としか言えない。
だがそれでも、攻撃はやめない。死にたくはないから。どんなに暗くても、光はあると、そう師匠が教えてくれたから。
次はこちらに、死神もろとも貫くように鎖が飛んでくる。死神に当たると思いそれは避けなかったが、それは間違いだった。
「っ…はぁ…、痛っ」
私の横腹に、鎖の先についていた鎌が私の横腹をえぐり取る。その鎖は、その死神をすり抜け、私にだけダメージを与えた。
「キャハハハ!いやぁ、いいねぇ、見事に引っかかってくれたねぇ」
そう目の前にいた死神は声を出し、消えた。その代わりに、鎖が出ていた魔法陣の方に全く同じ死神が現れる。
「ああ、最高の気分だ。楽しませてもらったよ」
緊急脱出をしようと考え、ポケットにあったナイフを何本が投げるが、
「おっと、そう簡単にするかよ。お前はこれで終わりだ」
そのナイフは鎖に巻き付け、その中で粉砕される。それと同じように私も鎖に巻きつけられる。
「さぁ、最後に言い残すことはあるかい。楽しめたからこれくらいは聞いてやるよ」
ああ、終わるんだな。そう思った。太陽が嫌なほど私を照りつける。
「ないよ。____もう少し、生きたかったとは思うけど」
私の目には、何故か涙が浮かんでいた。死ぬのは嫌だ。そう思ってしまう。私は、師匠から受け継がれた使命を、果たさなくてはならなかったから。だが段々と、巻きつける力が強くなる。
痛みで意識が飛びかける中、奇跡がおきた。
私を巻き付けていた鎖がバラバラと崩れ落ちた。私はそれと同時、地面に倒れる。
「は?何だお前は」
「別に、通りすがりのメイドですよ」
私が意識を失う前に見たのは、メイド服を着て、刀を鞘に納める白髪の女性の姿だった。
・時羅の魔法は、自身と自身の魔力が付着したものの位置を入れ替えるものです。ただし、ある程度の質量がないと入れ替えの対象にはなりません。ちなみに最低質量はだいたいナイフ1本分くらいです。




