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2.二度ある事は三度あるが


 切っ掛けは何だったのだろうか。それは今でも、きっとこれからも分からない。

 ただ、歯車が段々とズレ始めて、何とか動かそう、直そうと必死になっている最中、気が付いてしまった。

 ズレ始めたのではない、初めから、噛み合っていなかったのだと。


 誰のせいでもない、誰にも、悪意はない。ただ『イブ』の妃に、『アイレッタ』が嵌らなかっただけの話で。そして替わりに選ばれたのが、マクシス家の末娘であるベアトリーチェであった、それだけの事だ。



× × × ×

 

 

 卒業式の一年ほど前。

 ベアトリーチェは兄のレトランテに呼ばれ、応接室に来ていた。


「ビーチェ、彼の事は知っているね」

「えぇ、勿論……お久しぶりでございます、皇太子殿下」

「そう畏まらなくていい。今日は私用……レトに会いに来ただけだ」


 にこやかな兄とは対照的に、不機嫌とも取れる表情の無さでカップに口を付けているイヴは、以前見掛けた時よりも更に美しさが増した気がする。

 雑に掻き上げられていた黒髪が垂れて、切れ長な瞳に掛かる。公の場では見る事の出来ない、荒っぽさのある姿だが、だからこそ磨かれた精悍さや変わらない美しい所作に目が惹かれるのだろう。

 ベアトリーチェとイヴが最後にきちんと対面したのは数年前なので、ある程度の変化は当然と言えば当然。大人びていた人が、実際に大人の男性へと成長したという事だ。


「イヴは迫力が強過ぎるんだよ。プライベートくらいもう少し柔らかい雰囲気を纏えばいいのに」

「簡単に言ってくれるな。そんな芸当を易々とやってのけるのはレトくらいだろう」

「俺が得意なのは認めるけど、イヴが苦手過ぎるのも事実だと思うなぁ」


 微笑みを絶やさない兄と、眉一つ動かさないイヴ。正反対に見える二人だが、幼い頃からの親友同士、流れる空気は和やかだ。確かにイヴが纏う風格は多くの者を委縮させてしまうだろうけれど、兄といるイヴに対して、ベアトリーチェが畏怖した事は無い。


「兄様ったら、意地が悪いわ。まるで私がイヴ皇子を怖がっているみたい」

「ふふ、ごめんね。でもイヴが笑った方が良いのは事実だと思わない?」

「ノーコメントですわ」

「ほら、ビーチェもこう言っているよ?」

「何も言っていないだろう」

「否定しないって事は、肯定してるのと同じだからね」

「随分と拡大解釈だな」

 

 世間話、そう、なんて事の無い会話。兄に呼ばれ、皇太子と会い、ただ三人で世間話をしただけ。婚約者の姉ではなく何故自分が呼ばれたのかは分からなかったが、遠くない未来に義妹になるのだからと、特別気にしなかった……初めは。


 ただの世間話も、三回続けば作意である。

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