表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

インストール


まだ冷えの抜けきらない2月の夜、夜道を歩くのはどこにでもいそうな大学生だった。


「先輩も始めた方がいいっすよ。」

地方から出てきた彼の唯一の知り合いとも言える後輩は鍋をつつきながらそう言った。


「俺は、いつも言ってるだろ。普通の出会いをして、自然な流れで恋をしたいわけ。」

熱い厚揚げに苦戦しながら彼は答える


「でもそんなこと言ってもこの生活じゃ出会いなんかないじゃないですか。学校も通えないんだし」


後輩の言うとおり、大学に進学か決まった途端に夜に蔓延った流行病のせいで彼らは素敵なキャンパスライフどころか、教授の顔でさえ電波越しにしか見たことが無いのである。


「先輩のバイト先はパッとしないおっさんとパートのおばちゃん達しかいないですし。無理ですよ無理。」


サークル活動も、同級の学生の名前も顔もしらない。夢にまで見た都会でのキャンパスライフはバイト先との往復とパソコン越しの講義のみだった。


「まあでもお前の言うことも一理あるよな」

唯一の頼みの綱のバイト先の人間は誰も、合コンを開いてくれるような甲斐性もなかった。


「そうですよ、だから先輩も始めましょマッチングアプリ。同世代はこれでみんなウハウハな思いしてるんですから、波に乗らないと」


夢を膨らます後輩を冷めた目で見ながら彼の心は少し揺らいでいた


「てかさ、なんで厚揚げなわけ?鍋は普通豆腐じゃない?」

「うちの地元じゃ豆腐じゃなくて厚揚げなんすよ」

「いや、地元一緒だろ…まさかうちだけ違うのか…?」


たわいも無い会話が続くと、鍋の中と安い発泡酒の缶がいくつか空になる



「俺、そろそろ帰るよ」

皿を片しながら立ち上がる


「え、今日泊まっていかないんすか?」

「なんか少し酔っ払っちまってな。今日は帰るよ」

「そうっすか、気をつけて帰ってくださいね」

「あいあい」


ほかほかと温まった身体をコートとマフラーで包み、彼は家を出た。



「やってみるかあ。マッチングアプリ」


インストールをし、簡単な初期設定を済ませたあたりで家についたが満腹感とほろ酔いの波に飲まれて眠りについた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ