さくら色の少女の花弁を…
月明かりが煌々照る夜。
夜風のなかを、ひらりひらり。
さくら色の長い髪をひとつに纏めた青年が、ひらりひらり。
さくら色の袴を纏った、美しい青年。
夜風のなかを、ひらりひらりと踊る。
誰かを待つように、ひらりひらり。
すると、夜空からひらりひらり。
さくらの花弁が夜空からひらりひらりと落ちてきた。
青年は細くて白い美しい掌を夜空に伸ばす。
降り落ちてくる待ち人に両手を伸ばす。
ひらりひらり。
ふわりふより。
月明かりに照らされるさくらの花弁。
さくら色の少女の花弁…
風に乗ってとおくの山々から、青年桜のもとへと会いに。
花弁を散らし、青年桜に会いにきた。
夜空から降り落ちるさくらの花弁…
両手を夜空に伸ばす青年の掌に、ひらりひらり。
さくらの花弁は青年の手の中で指先になり。
指先から手のひらに。
手のひらから腕に。
肩、胸、腹、足…そして。
さくらの花弁は、さくら色の着物を纏った美しい少女に。
さくら色の青年は目を細め、さくら色の少女に微笑む。
さくら色の少女もにほりと、さくら色の青年に優しく微笑む。
少女桜と青年桜。
桜の花が咲く頃。
風に乗ってとおくの地から。
さくら色の少女がさくら色の青年に会いに来る。
恋慕うさくら色の青年に会いに来る。
さくら色の青年とさくら色の少女は手を重ねて。
冷えた夜風吹くなかを幸せそうに踊る。
くるくるひらひら…
ひらりひら…
今日、徳田さんが旅先の詩集内に「さくら色の少女」という詩を書いていたので、なんとなくその詩への返歌を書きたくなったのでした。
あなた様の刹那の時を下さり、ありがとうございました。