第五章 里の存在
「人狼の里に行こう」
「人狼の里?」
雨谷は乗り気のようだ。トラちゃんの話を目を光らせて聞いている。
「あの俺たちを人狼にした、あの人狼..."PG"と名乗っていた...あいつが、人狼の里の話をしていた。
人狼が多く住む、"鯖"と呼ばれるものがあるらしい。
今のあつなら、そこに堂々と入れる。」
鯖...か...
「そこの人狼の長、鯖主とかいう奴を殺せば、人狼は皆死ぬとかいう話だ。」
確かに、僕は人狼を恨んでいるし、三人とも人狼を殺すことには賛成している。
そこに行けば、人狼を皆殺しにすることは可能かもしれない。
ただ、その話が本当のことだとすると...
計画を練り合い、僕とトラふぁるが里に行くことになった。
雨谷は家で待機。僕とトラちゃんは人狼経験があるので、その方が良いというトラちゃんの案だ。
里の場所はトラちゃんが覚えていた。自転車で数十分、山の奥にある。
塀で囲まれたその里は、人狼でない者が入るのは相当難しいらしい。
僕が門から入ろうとすると、
「おい、待て。」
声を掛けられた。
「はい。どうかしました?」
「貴様...本当に人狼か?」
背筋が凍える。
「ええ、ほら、ここに耳もあるでしょう。」
「そうだな...いいだろう。」
意外とすんなり入れた。
「なんというか...人狼というより妖狐のような雰囲気だなと思っただけだ。」