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第十二章 存在価値
「そっかぁ...それが"アツ"なんだね?」
『ああ。俺は、"実験"の過程で生まれた、実験体だ。』
実は、アツの存在は昨日の夜頃に気付いていた。それから、僕たちは沢山話し合って、結構仲良くはなった。
...つまり、僕を妖狐にしたのも、ヘリオさんを人狼にしようとしたのも、トラちゃんを人狼にしたのも、実験の一環だったって事?
...僕らを弄んでいるようにしか感じない。
「へえ、二つの人格が同じ身体に共存し、会話も出来る...と。」
突然後ろで声がした。
「お前は...」
あの時、僕を変えた、あの人狼だ。といっても、人狼であるのは僕と同じように耳と尾、紅い目、口から少し見える程度の牙だけだ。
「それ、見たんでしょう?なら、貴方が生まれた意味がわかるでしょう。アツ。」
『話を聞かなくて良い。あいつは、お前にとって敵だろ?』
「私としてはね、貴方が人を喰わないのか、食欲を抑えつけてるだけなのか確かめたいんですよ。今後のために。」
そういうと、奴は其処に置いてあったスプレー缶のような物を掴み、僕に向けてそれを噴出した。
その霧は、はじめは小さい物であったが、すっと少し吸うと、たちまち僕の周りを覆っていった。




