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板前駅話

作者: 倉紀ノウ


「誰がその後始末すんのか、知ってっかい?」

 なんて、気味の悪い話を始める訳でなんですよ、その客がさ。

「血ィそのままにするわけねえだろう。車輪だけじゃなくて、車体とかにも付いてんだぜ」

「やっぱし、駅員とかじゃねえんですかい?」

 愛想を出して聞いてやりますと、

「分担制なんだよなぁ。どこにくっついてるかで担当が違うの」

 俺は早く勘定して出てってくんねえかな、なんて思っている。

「するってえと、あんた昔駅員だったんだな? そいか今もか」

「ばーか。保線技術員だよ」

 だいぶ酒が入っていてやりづれえよ。

「そりゃ聞きなれない職業ですねえ。じゃあ、あんたは後始末をしたことがあるんで?」

「うん? そりゃあるさ」

 なんだか奥歯に物が挟まった言い方になったので、おかしいなと思っていると、

「こいつ、現場に着くなりホームに横になっちまったんですよ」

 隣の親父がそう言った。決まりが悪くなったのか、隣の飲んだくれ、赤い顔をして下を向いてやがる。

「オチを先に言っちまいますよ。飛び込んだのはぬいぐるみだったの。祭りの夜店で置いてあるような、でっけえヤツあるでしょう。それを誰かが人と見間違いしたんだわな。そんでこのヤロウ、ぬいぐるみの腕ェ見た途端に気ィ失っちまったんだよ。こんな顔してなあ」

「大将、お勘定」

 飲んだくれが怒鳴って席を立った。

 

 怪談もたまには役に立つもんで。


 






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― 新着の感想 ―
[良い点] 一回読んだだけでは自分には理解が難しくて、何度か上から読みました。隣の親父が渋いですね! 怖さは無かったですが、会話がぽんぽん飛ぶ感じが楽しかったです。小心者で恥ずかしがり屋の飲んだくれが…
[良い点] 出囃子が聞こえてきそうな江戸弁ですね。
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