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九話

回想はいりましたー

 


「本当に来てくれるなんて思いませんでした。」


 肩にかかる程のストレートな黒髪を指でとかしながらそう話す様はまさにお嬢様だ。学校の制服から着替えて白と黒を基調としたシンプルなワンピースを着ているだけで素の良さが際立つ。

 この人にファッションは必要ないのかもしれないな。


「おれも同じですよ。ただ学校ですれ違った時に話す。ずっとそういう関係だと思ってました。」

「でも、今日来たということは、、」

「はい。あの時誘ってくれた気持ちがまだあるならぜひおれを先輩、、というか桜楽家の執事として雇ってください!」

「はい!!喜んで。」

「っありがとうございます!!、、、よかった!!あれだけ興味ない感じで振舞っていたんでもしかしたら断られるかもって心配だったんですよ」

「そんなことありえませんよ。そもそも私が執事に誘ったのは慎が最初で最後ですから」


 そんな嬉しそうな顔で言われるとさすがにこっちも照れるな、、。

 おれが黙ってしまっていると先輩がひとつ質問を投げかけてきた。


「それで急にやる気になった理由はなんだったんですか?」


 そりゃ気にならないわけがない。

 当然それが分かりきっていたからおれは用意していた答えを返した。


「この前やった白執事っていう映画見ました?」

「見ていないですけど、納得しました。つまり映画に触発されて執事の世界に興味をもっ、、ふふっ、、持ったんですねっ」

「笑いが隠しきれてないですよ!!、、、でもいいじゃないですか。先輩だってちゃんと自分の欲を貫けることは良いってあの時言ってましたよ!!」

「たしかに言いましたね。ふっ、、1月20日。初めて私たちが会った日ですから忘れませんよ。」

「日付はちょっと曖昧ですけど、おれもあんなにクレープおごってもらえた日は忘れないですよ。」

「生クリームいっぱいの高いクレープでしたね!懐かしいです、、。」


 懐かしい、、、か。あの日先輩に会ってなかったらおれは本当に耳なし人間を選んでたかもなあ。

 あの日のことが少し思い出されてくる。


 先輩と会ったのは天音とショッピングをしているいつもどおりの休日だった。







  ―――――――――――――――――――








「ここが最近流行りのコスメとか服売ってるとこなんだよ!結構高めだけど、、、。」

「まじで桁がひとつおおいな、、。そのぶんいい感じのも多いけどさ」

「あ、これとか可愛い!!ねぇ似合うかな!」

「バッチリだな。もうちょっと露出があってもいいと思うぞ。」

「うわ〜お兄ちゃんのえっち!!中学生は露出なんて考えないよ!」

「うん今のはきもかったわ。言った俺が思ってるから間違いない」


 シスコンじゃないけど今のはそう捉えられても文句言えねえな、、。奈々とか鷹宮がいなくて良かった!!


「あ、ねぇあの人店員さんナンパしてない?」

「え?、、、あ〜ぽいな。どうせ彼女のプレゼント選ぶとか言いながら連絡先聞き出そうとしてんだろ」

「顔もまあまあだし、なんであのアウターにあの靴なのか全くわかんない。まずファッションから見直すべきだよね!!」

「今ちょっと毒舌はいった!?」


 天音がそういうこと言うなんて全然ないぞ、、。

 ナンパしてる男を見てみるとブランドをひけらかすようにして女性店員から気を引こうとしてるみたいだ。

 ちょっと調子が出てきたのか声も大きくなる。


「このアウターだと今の時期海沿いのデートスポットとか行っても寒いかもしれないじゃん?だからさ、お姉さん一回着て一緒に下見してくれない?おれ"海鳴り''ら辺めちゃくちゃ詳しいからさ!!よく行ってるし奢るよ??」

「すいませんお客様!当店ではそういったことはしていないので、、、。でもその柄のアウターならどんな女性にも似合いますよ!」

「似合うのはわかったんだよね!ただちょっと実際に試してみないとわからないこともあるじゃん?、、、というかここだけの話、これ彼女にあげるんじゃなく女友達にあげるつもりなんだよ。でももしお姉さんがおれとデートしてくれたらこれあげるからさ!」

「いえ、、!本当に困りますお客様、!!」


 しつこいなあの人も。全力で拒否されてんじゃん。それに

 天音は買うやつもう決まったみたいだしずっとナンパされ続けてたらせっかくの休みなのに可哀想だな、、。

 こういうの苦手だけど、、しょうがないか。

 手で髪をたくし上げてイメージは少しチャラい感じの大学生でいこう。


「あれ?お前西洋大学いってね?」

「は?な、なんだよ急に」

「いやさっきからどっかでみたことあるなぁと思ってさ!!お前この前彼女と歩いてただろ?」

「あ、あれは彼女じゃなくて女友達だから!ってか関係ないだろお前は!」

「でもその彼女、おれの友達とたしか仲良いからさ!そのお姉さんとお前がデートすること伝えても問題ないんだよな?」

「なっ!!いや、、それはなんつうか、、」


 露骨に焦ってるな。運良く予想が当たったみたいで良かった、、!!


「いまやめるならおれも言わないぜ?男なら誰でも通る道だからな!」

「っわ、わかった!!やめるから美香には言わないでくれ!」

「おっけ!!もちろん約束は守るぜ!!でもお姉さんにも謝っとけよな?」

「、、ああ!、、、その無理やり誘おうとしてすいませんでした!何分も絡んでしまって申し訳ないです、、」

「い、いえ!大丈夫ですよ!!またぜひご利用くださいませ!」


 お姉さんとも和解したみたいだな。


「そんじゃ彼女さん大切にな!!」

「お、おう、、!、、、すいません、これラッピングで頼めますか?」

「はい!!ありがとうございます!!」


 結局、ナンパ男はアウターを購入して帰っていった。帰り際になぜか礼を言われたけどまったくもってお門違いである。だっておれは早く会計を済ませてクレープが食べたいだけだったから。





 そのまま会計を済ませ後、おれたちは目的のクレープ屋でゆっくりくつろいでいた。


「お兄ちゃんありがとね!!」

「ん?なにが?」

「さっきあの人追い出してくれたのあたしが買う服決めちゃったのわかってたからでしょ?」

「まあ待たせたくないってのもあったけどこのクレープ数量限定だからな!売り切れてたらと思ったら居ても立っても居られなかったわけよ」

「ふぅん。じゃあそういうことにしといてあげる!!」


 そう言って天音はおれのクレープにかじりついてきた。


「あっ!!ちょっ、おれのクレープたべるな!!」

「えへへ!!美味しいなぁ〜」

「このっ!おれにもお前の食べさせろや!!」

「嫌〜!だれかたふけて〜」


 天音のやつ、、周りの目でおれが動きにくくなるからってなんてことを、、、!


「なにか手伝いましょうか?」

「え?」


 突然の透き通った女の声に思わず顔をそちらに向けるとそこには外見は天音にも劣らないレベルで、なぜかクレープを両手に持った美少女がいた。

おれがなんで2つもクレープを買えてるのか聞く前に美少女は名乗る。


「桜楽 朱華里と言います。よろしくね?」














ひょうか、、、ぶくま、、、!!!

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