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七十七話

 


「おはよう慎!!」

「お、おう。なんか元気だな」

「いっつも元気だよ?」

「まあ基本はそうだけどさ……」


 朝からハイテンションなのはよくあるがここ最近、特にこの前のカフェ以来どこか元気は無かった気がする。


 昨日もほとんど話せなかったし……麗花がなんか言ったのか……?


「慎さ、今週の土日どっちか暇?」

「えっと………いやどっちも予定があるな」


 土曜に天鳳、日曜に愛咲。


 我ながら女子と話す機会が増えたなと思う。


「またバイト?」

「それは日曜。土曜は天鳳と遊ぶんだ」

「え………沙雪ちゃんと……?」

「カラオケ行こうってなっててな」

「そうなんだ……」


 ここも特に隠す必要は無いだろう。

 天鳳と奈々が繋がってるならすぐバレるしな。


「じゃあ次の週は?」

「次の週か………」


 週中にはホテルから家に帰っておきたい。

 借金関係の進展があるから遊んでる暇ないんだ。


 ただ断り続けるのもな………。


「土日、のどっちかなら空いてる」

「本当!? じゃあ遊び行こうよ!」

「いいぞ。だれ誘う?」


 また鷹宮たちを誘うのもありだけど合コンの話が出たら面倒だ。


 おれがだれを誘うか悩んでいると、奈々がこっちをジト目で見ていた。


「なんだよ……」

「それわざと?だとしたら慎、人が悪いよ」


「ふん!」なんて言いそうな顔で口を尖らせる。


「わざともなにも意味がわかんないんだけど」


「2人!!」


「え?」


 ……いや、おれはすぐにわかった。


 ただ聞き返さずにはいられなかったんだ。


「2人だけで遊ぶの!! この前もそうだったけどすぐ終わっちゃったじゃん」

「まあ、そうだな」


 なんとなくあのまま話していられる雰囲気じゃなかったからな。


「だから今度は長く遊ぼうよ」

「……おう」


 2人……ねぇ…。


「いやー朝からお熱いね!!」

「ほんといい天気だよ」

「そっちじゃねえよ!」


 もう1人の朝からハイテンションが話しかけてくる。


「昨日は喧嘩でもしてたのか?」

「……なんでそうなる?」

「そりゃ全然話してなかったからな! いっつも一緒にいるのにさ」


 当然のように言う鷹宮。


 周りから見れば何かあったのは丸わかりだったらしい。


「もう大丈夫だもんね?」

「……だな」

「そりゃよかった! おーいみんな! 才原と橘仲直りしたってよーーー!!」

「は、はぁ………!?」


 急にクラス中に叫んだかと思うと、一斉に騒がしくなり始めた。


「やっとかよーー。才原がすぐ謝んないからだろーが!」

「特に月曜は最悪だったなーー」

「……一生そのままで良かったのに……」

「橘さんが……笑ってる……!!」


「なんだよこれ……」


 そんなにクラスに影響与えてたのか!?

 みんな気にしてたのかよ……あとちょっと怖いやついたな……


「おれが盛り上げてたんだよ!」


 鷹宮が見せてきたスマホにはグループトークが写っていて投票がされていた。


 一位 3日以内 21票

 二位 3〜6日以内 8票

 三位 一週間後 4票

 四位 永遠 3票

 


「もしかして………」


「何日以内に仲直りするかみんなで賭けてた!」

「下衆が!!!」


 こいつには一回ちゃんとムードメーカーのなんたるかを叩き込んでやりたい。


「合計36票って………ほぼ全員参加かよ」

「オッズはあんま上がんなかったからなー1人100円ちょいしか儲かんないわ」

「人の不幸で利益を得るな」


 栄女のやつらにバラすぞ。


  というか、なんでこんなに大事に……。


「才原ぁ………」

「天鳳ちゃんだけじゃなく………クラスの天使まで……」

「三光駅ってホームドア………ちっ、あんのかよ」


 やっぱ1人イかれてるよな。殺されそうなんだが。


「何回も言ってるけど、おれたち付き合ってるとかじゃないからな?」

「知ってるけど。結構おれはお似合いだと思うんだよな〜」

「別に仲悪くはないけどさ……奈々もなんか言えよ?」


 さっきからずっと静かな奈々にも当事者の意識を持ってもらいたい。

 お前も言ってくれないと場が収まらないぞ。


「うーん………」

「な、なにを悩んでる?」


 解決策か?それなら単純だ。


「仲良いだけだから」とか「じゃあみんなで遊ぼうよ」みたいなこと言っとけばいい。


 なんとかして鷹宮をこっち側につければいいんだ。










「––––––金曜日、告白したよね?」


「……………は?」


 三光高校二年二組、今年一番の静寂が訪れる。

 昨日とは打って変わって音が消えた。


「OKしてくれたじゃん?」


「は、いや………なに言っ––––––」


 動揺するおれの口が塞がれる。


 同時に首がしまった。


「さいはらぁぁぁあああああ???」

「どーゆーことだてめえ!!??」

「処すっ……処すっ……処すっ……」


「ちょっ、まっ……」


 やばい、こいつらガチだ………!!!


 おれは奈々に助けを求める。


「『あ〜ん』までしてくれたのに、忘れちゃったの………?」


 おい?


 ––––––ドスッ


「うはっ………!!」


 ちょ、まじで膝入った……っ……


「さいはらくぅぅぅうううううん????」

「どーゆーことだてめえ!!??」

「除すっ……除すっ……除すっ……」


 容赦ないどころか、昨日江東に殴られたところは全然治ってないから本当に痛い。うっすら涙すら浮かんでくる。


「ななっ……まじで勘弁…!!」

「まあ、私の『あ〜ん』は断ってたけどね」


 そうだ、おれは断ったんだ!、


「だから……いいだろ?お前らが羨む『あ〜ん』はっ……されてないんだ!!」


 心なしか首が緩くなって………いや、きつくなってるぞ?


「さいはらきゅぅぅぅううううんんん?????」

「どーゆーことだてめえ!!??」

「すっ……すっ……すっ……」


 逆効果じゃねえか。

 奈々のやつ、やっぱり根に持ってたのかよ。


 しかも1人イかれすぎて言葉になってないやついるぞ。


「あれは……嫌だったわけじゃっ…!」


「フンッ!!!」

「がっっ……!!」


 こいつ、本気じゃん………


 みぞおちへの一発でおれの意識は沈んでいった。







  ––––––––––––––––––––––––––––––––––––







「……あれ……才原気絶してね……?」


 海斗が急いで駆け寄って体を起こすと慎は目を閉じてぐったりしていた。


「え……ほんとだ……」

「や、やりすぎちまったか……」

「すっ……すっ……すっ……」


 1人を除いてみんなやりすぎの自覚はあるみたい。


 私としては少しスッキリしたから良かったかな。


「ま、カップルのフリだったんだけどね!」


「え、ほ、ほんとか!!??」

「まじかよ!!………でもそれもずるくね……??」


 フリだろうと慎はこうなる運命だったらしい。


「あー、じゃあおれ才原保健室連れてくから。なんつーな騒がしくしすぎたな」

「大丈夫だよ。海斗、ありがと」

「おう」


 もちろん、この一連の流れは仕組んであった。


 少しでも慎と私がカップルに向いてるというイメージをつけるために、海斗にうまく繋げてもらったんだ。


 海斗は最初から私側。ごめんね、慎。


 もう躊躇わない、誰にも負けないって決めたから。


 私は全力で行くよ。




 海斗が慎を運び出したのを確認してから席に戻りつつあるみんなに伝える。



「でもね、私本当は––––––」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや普通に腹パンしてたら気絶したんで保健室連れてきました〜って停学沙汰じゃないんですかね
[一言] 真面目な話気絶する程の腹パンは普通に死んでしまうレベルなのでは? 流石に危険すぎるような…
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